異国らしさが吹き込む暮らしの場~解放村(ヘバンチョン)
吉村剛史(トム・ハングル)
2018/05/07 改:2019/10/01
ソウル・南山タワーの麓に位置する解放村(해방촌、ヘバンチョン)。梨泰院方面から徒歩で訪れることができ、近年は隣に位置する「経理団通り(경리단길、キョンニダンギル)」とともにカフェやレストランが増加中のエリアです。
[解放村のメイン通りから南山タワーを望む]
解放村も、経理団通りもそれぞれが緩やかな坂道になっており、そこにお店や家が建っています。解放村の北側にはソウルのランドマーク、南山タワーを望みます。
解放村(해방촌)は、梨泰院エリアから
解放村のメインストリートへは、地下鉄6号線の緑莎坪(녹사평、ノクサピョン)駅から北方向へ行き、徒歩で5分ほど。梨泰院エリアを散策したあとにそのまま訪れてもよいでしょう。
[解放村の地図]
カフェやレストランがメインではなく、解放村の歴史散策を楽しみたいという方は、地下鉄4号線の淑大入口駅から徒歩またはバスでの移動がおすすめ。淑大入口方面からの解放村への入口ともいえる小さな環状交差点までは徒歩15分ほどです。
解放村(해방촌、ヘバンチョン)は避難民・失郷民たちの街
今回は梨泰院方面から出かけてみることにしましょう。緑莎坪駅から解放村の入口へ進むと、「Art Village」と書かれたパネルが見られます。「解放村芸術村」というプロジェクトとして作られたようです。
ソウルナビの記事によれば、2012年頃からこのような表示が増えているようですが、韓国では居住環境が良くない街に壁画を施すなどして活性化を図ることがあります。ここもそのひとつなのでしょう。
解放村も「貧民街」として認識されていた場所。元はといえば日本統治が終わったあと、海外から帰国して住み始めた人や、朝鮮戦争期に北から逃げてきた避難民たちが暮らしはじめた町。解放村は斜面に家が建てられていることが多いことからしても、決して条件が整った場所ではないのです。
すぐ隣には米軍基地があり、ターミナル駅であるソウル駅、龍山駅とも比較的近い場所に位置していることから、生活の基盤を築くには決して悪い場所ではなかったようです。参考:TBS市民の放送(韓国語)
そんな解放村は、住民たちが暮らす場だけに生活に関連した施設が数多くあります。薄暗い路地にある新興(シヌン)市場、そして教会なども。
[解放村にある解放教会(해방교회)]
梨泰院側からメインストリートへ入っていくと、道の中央まではカフェなどの飲食店が多いのですが、それより先へ進むと街の不動産業者や、地域金融機関、スーパーなどが多くなります。
解放村のメインストリートはグルメ通り
とはいえ、私たち観光客は話題のスポットとしての解放村を愉しみたいもの。すると人気のグルメ、カフェが気になるところ。まずはメインストリートへ出かけてみましょう。
解放村は人々の生活の場、という雰囲気を感じさせる場所でありながらも、隣に米軍基地があるということも影響してか、エスニック風のお店が多いこともひとつの特徴といえます。
[ハンバーガー・ピザのお店等、アルファベット表記が目立つ]
●タモトリ
解放村の人気の店のひとつがタモトリ。このお店は、マッコリバーの先駆けとなったお店で、全国各地のマッコリが美味しいおつまみとともに味わえます。
最初に注文してみたい「サンプラー(3,000ウォン)」は5種類のマッコリで試し飲みが可能。そのあとに気に入ったマッコリを注文しましょう。マッコリに合うおつまみは味もよくて量が豊富です。マッコリが好きな方は一度は訪れておきたいお店です。
[サンプラー:3,000ウォン]
タモトリ(다모토리 히읗)
住所:ソウル市龍山区新興路31
店舗詳細:Naver プレイス
参考記事:梨泰院・タモトリ~ソウル・マッコリバーさんぽ
●FAT CAT(펫켓、ペッケッ)
解放村のメインストリートには洋風のお店が多いのですが、そのひとつとして取り上げたのがこのお店。サンドウィッチやサラダなどが味わえるFAT CAT。外国人客も多く、テラス席もあるお店です。
[FAT CAT]
写真のほかにバゲッドのサンドウィッチやプレートのブランチメニューなど様々な料理があり、コーヒーなどとともに味わえます。下の写真は2015年当時のイメージとしてご覧ください。
[8,500ウォン+コーヒー3,000ウォン(2015年当時)]
FAT CAT(펫켓)
住所:ソウル市龍山区新興路28
店舗詳細 :NAVER プレイス
※最新情報のブログや営業時間など詳しくは店舗詳細のリンクをご覧ください
●Bonny’s PIZZA PUB(보니스피자펍、ボニスピジャポプ)
Bonny’s PIZZA PUBは、行列ができるピザのお店。解放村メインストリートの中央あたりに位置しています。「ペペローニ&ハワイアン Party」などのピザが24,000ウォン~。
Bonny’s PIZZA PUB
住所:ソウル市龍山区新興路3ギル2
店舗詳細:NAVER プレイス
解放村にはピザやハンバーガーやサンドウィッチの店が目立ち、エスニックタウン・梨泰院の空気が流れてきているようです。米軍基地はメインストリートのすぐ隣です。
解放村の歴史を感じよう~108ハヌル階段
日本統治時代、南山エリア周辺には3つの神社が建てられましたが、そのひとつが京城護国神社です。
神社は取り壊されましたが、残った108段の階段、現在は「108ハヌル(空)階段」と名付けられており、その階段を挟むように住居が建てられています。この場所は2004年のドラマ『バリでの出来事』のロケ地にもなりました。
ここまでの記事では梨泰院側からの散策ルートでしたが、108ハヌル階段は淑大入口駅から歩いて約15分ほどのところにあります。
[京城護国神社の108階段]
階段を上がって行くと、やはり住宅街があります。かつての貧民街を思わせる建物がないわけではありませんが、今では新しく立派な建物も観られます。この地区の壁や階段には「解放村芸術村」の名が示すように、ところどころに壁画が施されています。
少し開けたところに出ようとしていると、「解放村五差路(해방촌오거리)」へたどり着きます。解放村のメインストリートは緩やかな坂ですが、その一番の高みになっている場所がここなのです。金融機関があり、バス停でバスを待つ人が多く、街の中心的な場所であることがうかがえます。
[解放村五差路]
日本統治からの解放後、避難民たちが移り住んできた解放村。ここを訪れると、日本統治からの解放や朝鮮戦争という激動の時代のなかで、日々を懸命に生きてきた様子を想像しつつ、今もなお人々の暮らしが感じることができます。
梨泰院や米軍基地の影響から異国的な空気も漂うこの街は、落ちついた街の雰囲気が好きな方や、ディープなソウルの様子を感じてみたい方におすすめ。梨泰院エリアまでやってきたら、足を延ばして解放村を散策してみてください。
※解放村のすぐそば、梨泰院エリアの詳しい情報は下の記事をご覧ください。
※解放村は龍山区に位置し、解放村から龍山基地を挟んだ反対側に龍山駅があります。
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解放村は米軍基地の隣であり、梨泰院エリアの雰囲気を感じながらも、ディープな地元感ある街。隣の経理団通りの坂のうえのほうはハイソなレストランやカフェが多く、また違った雰囲気があります。
解放村で遊んだ後は梨泰院エリアへと流れていくのもよいですが、淑大入口駅から地下鉄4号線に乗ってソウル駅、明洞方面へと移動するのもよいでしょう。時間を節約したければ、明洞方面へはタクシーで移動するのも手です。(2018/6/27追記)

吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール