100年続く韓屋の趣と今を感じられる街、益善洞(イクソンドン)を歩いてみよう!
吉村剛史(トム・ハングル)
2018/11/16 改:2020/11/08
ソウル・益善洞(イクソンドン、익선동)。仁寺洞の東側に位置するこの街には、韓国の伝統家屋、韓屋(ハノッ、한옥)が多く、それは1920年代から徐々に造成されたものであり、ところによっては100年近くの歴史をもつ家屋街です。
近年、この益善洞には韓屋を利用したカフェやレストランが増え、現地の若い世代はもちろん観光客にも人気を集めており、人気ドラマ「トッケビ」のロケ地となったカフェもあります。
伝統家屋の街並みでは韓国らしい写真が撮れることもあり、こうしたところに雰囲気が良かったり、SNS映えしたりもするお店が集まっているのです。
参考:益善洞(イクソンドン) ※ハングル表記は”익선동”です。
益善洞(イクソンドン)の最寄り駅と地図を見てみよう
益善洞(イクソンドン)へのアクセスは、地下鉄3、5号線鍾路3街(종로3가、ジョンノサムガ)駅が最寄り。地下鉄1号線の鍾路3街駅で下車してももちろんよいですが、出口までたどり着くのに少し時間がかかります。地上を歩いてもよいでしょう。
地下鉄の出口を出ると、夕方から夜にかけては屋台街。とくに6番出口の先の路地には焼肉店街があります。夕方になると仕事帰りの人が集まってきて、煙がもくもくと立ち上がるので、ここを歩いていると仲間に入りたくなってしまいます。
屋台や焼肉店で食べ歩き、飲み歩きを楽しむのも鍾路3街駅周辺の大きな楽しみのひとつ。お好きな方はぜひ以下の記事をご覧ください。
益善洞(イクソンドン)の今と昔
益善洞(イクソンドン)にある韓国の伝統家屋、韓屋(ハノッ)は、1920年~50年代にかけて造成されたもので、当初は日本の支配へ対抗する形で建てられたもの。
益善洞のちょうど北隣に位置する「北村韓屋村」は、朝鮮時代から両班や高級官僚が住んでいた場所でもあり、より歴史の古い韓屋といえますが、益善洞の韓屋村は庶民層が暮らしていた場所です。そんなこともあってか、溶け込みやすさが感じられます。
とはいえ、ここは都会のど真ん中。すぐ隣の仁寺洞は観光地となっており、韓屋村の北側にはイビスアンバサダーホテルなどの高い建物があるにはありますが、今後高層の建物の建設は制限がかかるようです。
[2016年初夏の益善洞、この頃には店が入り始めていた]
益善洞(イクソンドン)は当初、再開発が計画されていてビルが建つ予定があったのですが、韓屋の街並みを残すという流れに変わっていき、2014年以降、ここにレトロなレストランやカフェが増えていったのです。
[レトロなレストラン「軽洋食1920(경양식1920)」]
2016年初夏には余暇を過ごす韓国人がちらほら訪れる場所と印象を受けましたが、2017年、2018年と時を経るにしたがってその雰囲気が様変わり。韓屋の趣を残しながらも、大幅に改造したお洒落なカフェが増えるようになり、外国人観光客もやってくるようなスポットとなりました。
インスタグラムをはじめとするSNSの隆盛により、フォトジェニックな写真が撮れるカフェもまた人気を集めています。下の写真のマダンフラワーカフェ(마당풀라워카페)もそのひとつだといえるでしょう。
ちなみにこの「マダンフラワーカフェ」は2016年~2017年にかけて韓国で放映された韓国の人気ドラマ「トッケビ(도께비)」のロケ地となったことでも知られています。このドラマは日本でも放映されました。
[マダンフラワーカフェ(마당풀라워카페)]
このように庶民的な韓屋村であった益善洞の一帯は、隣の仁寺洞のように一気に観光地化を遂げたのです。実際に住民が暮らすところでもあるので、騒音などの弊害も生まれていることは確かなようです。
益善洞でご飯を食べよう~ランチにもディナーにも
益善洞(イクソンドン)には新しいカフェが続々とできるなどして、話題のお店はいくつもあります。そのなかでもこのエリアで数年間定着しているお店も。
なかでも「益善洞121(익선동121)」は人気店のひとつ。韓屋のなかでこぢんまりと建つこのお店は、「カレー(카레)」と「ニラ味噌ビビンパ(부추 된장비빔밥)」の2種類が基本で、注文するメニューによって入る具材が少しずつ異なるというもの。
[益善洞121(写真左)]
カレーはトマトチキンカレーや、牛肉キノコカレー、レンズ豆カレーも。ニラ味噌ビビンパは、キノコが入るか、アサリが入るかの違い。韓屋であり、小洒落たインテリアのなかで料理を味わえることもあり、とても雰囲気がよく心地よいお店です。
[きのこニラ味噌ビビンパ(포고 부추된장비빔밥)7,500ウォン]
ソウルの中心に位置しながらも、7,500ウォンという、わりとお手頃の価格。青々しいニラが美しく、ご飯に混ぜて食べる味噌チゲには豆腐もたっぷり。そして付け合わせでお肉もついてきます。
セットメニューではドリンクや、ビール、ワインもあり、一緒に味わってもOK。小洒落た雰囲気なので女性も入りやすいお店。おかずも一人分ずつ出てくるので、ひとりごはんでも安心です。
益善洞121(익선동121)
11:00~21:00
益善洞121(NAVER PLACE)
今は食べ歩きもあれこれ~韓食もデザートも益善洞(イクソンドン)で
益善洞(イクソンドン)が注目されるようになったあと、観光地化がいっそう進み、食べ歩きができるようなおやつ・デザートを販売する店も増えてきました。そのなかでいくつかピックアップしてみることにします。
最初のお店は「益善洞121」のすぐ近くにあるアイスクリーム店、”녹기 전에(ノッキジョネ)”。直訳すると「溶ける前に」という意味のジェラートのお店です。ジェラートはカップとコーンを選ぶことができ、ひとつ3,500ウォン。
[パッションフルーツ(패션 후르츠)、3,500ウォン)]
パッションフルーツはパンチの聞いた南国らしい酸味が魅力的なジェラート。ほかにもダークチョコ、ピーナッツバター、パイナップル、チェリーのほか、きな粉味と思われるインジョルミ(인절미)があります。
ノッキジョネ(녹기 전에)
営業時間:0:00―21:00
店舗インスタグラム:ノッキジョネ(녹기 전에)
益善洞の路地(マダンフラワーカフェの通り)にある「under 2 gram コロッケ」。こちらは韓国のチェーン店です。
韓国でのコロッケ(고로케)は日本のコロッケとは異なり、餡が入った揚げパンです。ジャガイモが入った「カムジャコロッケ(감자고로케)」や、「野菜コロッケ(야채고로케)」がありますが、購入したものは「唐辛子チャプチェコロッケ(고추 잡채고로케)」。
「唐辛子チャプチェコロッケ(고추 잡채고로케)2,500ウォン」
パンの部分が非常にふっくらしており、なかなかの美味しさ。ほどよく辛く炒められている春雨のなかに、青唐辛子のパンチがピリッと効いています。辛さはピリ辛程度です。
under 2 gram コロッケ(고로케)
under 2 gram コロッケ(公式ホームページ)
益善洞は世代問わず楽しめる町に!
益善洞(イクソンドン)には20代が多いですが、年代問わず様々な人が歩いています。韓屋の趣を感じるのもよいですし、様々なお店があることを見るだけでもきっと楽しいと思います。
こちらも韓屋を改造して、カフェになったお店。
そしてモダン風のインテリアのカフェも近年の流行です。新しい(new)+レトロ(retro)が組み合わさった「ニュートロ(뉴트로、ニュートゥロ)」といわれる現象を反映したものだと思われます。
益善洞を歩いていると、こんなふうにカフェが増えたためか、若い女性の観光客がとても多い印象を受けます。
そのなかでも人気店のひとつ、「ミルトースト(밀토스트)」というお店。トースト専門のカフェで、なぜか日本語で「こむぎ」と書かれています。
木のぬくもりを感じる店内で、栗が入った食パンや、フレンチトーストなどが味わえます。お店の前を通るとやはり20代くらいの女性が多く、お店の写真で記念撮影を楽しんでいます。
このように若い世代が増えたことから、ついには北側にあった韓屋の跡地にこのようなデッキができ、衣服の販売を始める業者まで出てきました。
※2020/11/06にこの項目を一部追記しました)
伝統的な韓国らしさと、流行が入り混じる街
都会の真ん中に位置する益善洞(イクソンドン)の韓屋村。古い伝統家屋に価値を見出し、そこにレストランやカフェを開くようになり、わずか数年で現在のような街になりました。
観光客としては韓国らしさを感じることができる場所であり、そこに現代的なレストランやカフェが共存しているだけでなく、さらには流行まで取り入れられています。
明洞や仁寺洞といった有名観光地だけにとどまらない、一歩踏み込んだ旅をこの街で楽しんでいただければと思います。
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吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール