春川で楽しむプチ船旅~山と緑に囲まれた『冬のソナタ』の都市
 吉村剛史(トム・ハングル)
 2017/09/13 改:2019/10/17 

春川(チュンチョン)は江原道の西に位置し、人口は2017年現在、約28万人。日本統治時代以降に発展した江原道の道庁所在地として栄えています。

2002年のドラマ『冬のソナタ』のロケ地として登場したことから、ドラマファンを中心に世界的に知られるようになった春川。それから15年が経った今も、特に韓流ファンのあいだでは『冬ソナ』の地として語られます。


[春川明洞通り]

さらに春川といえばドラマ『冬のソナタ』のほかに、鶏肉辛炒めの「タッカルビ」を思い浮かべる方が多いと思いますが、それだけではありません。ソウル・漢江へと続く北漢江の流域に位置し、ダムに囲まれた「湖畔の都市」でもあるのです。

春川への行き方は?

ソウル・龍山駅から終点・春川駅までは特急列車ITX‐青春で68分。ソウル北東部の上鳳駅からは通勤列車(一般)で約80分かかります。ソウル-春川の鉄道の距離は80~90キロほどで、東京都心からの距離に換算すると、埼玉県秩父市や、山梨県大月市ほどの位置になるのです。

自然が豊かなイメージの強い江原道(カンウォンド)ですが、春川はソウルからも近く、市内はわりと都会的な場所であるがゆえに「春川は江原道ではないですよ、ソウルみたいなものです」と答える韓国人もいるほど。

しかしヒーリングスポットという印象も強いようで、ソウル首都圏からは家族や友人たちとともに日帰りで気軽に訪れることができる場所でもありますし、大学生たちは「MT(エムティー)」とよばれる合宿のメッカ、春川市内の江村を訪れたりします。


[春川の地図]

春川で船旅とは(!?)

内陸に位置する春川ですが、今回のテーマはなぜか「船旅」。少々ひねったタイトルではありますが、湖や川がある水辺の都市だからこそ、「船」に着目してみたいと思います。

「船」も広く見れば、モーターボートのようなレジャー系の「船」のほか、カヌーやスワンボートといったファミリー向けの「船」も愉しめるのですが、この記事では、ゆったりと乗れる船をピックアップします。

道境となる北漢江を渡り、南怡島(ナミソム)へ!~京春線・加平駅

『冬のソナタ』のロケ地でもある南怡島は、北漢江の中州に位置する島。京春線の加平(カピョン)駅で下車し、そこで市内バスに乗り換えると約15分で、加平船着場に到着します。

南怡島は「ナミナラ共和国」という独立国をコンセプトに運営されており、船着場の「出入国管理事務所」では入場料10,000wonを払ってVISA(入場券)を受け取ります。ここから船に乗り、南怡島へ。


[南怡島船着き場]

ちなみに加平(カピョン)駅から南怡島の入口となる船着場までは「京畿道(キョンギド)」です。川の中央が道境にあたり、船で京畿道から江原道へと入っていくのです。

この船旅は10分にも満たない短い区間。帰りも船で戻るので、往復で15分ほどでしょうか。ナミナラ共和国までに移動するときには、水上スキーなどで大ハッスルしている人も多く見られます。

南怡島は都会から離れ、リフレッシュしたい方におすすめ。島には緑も多く、散策や森林浴を楽しんだり、芝生でゆっくり過ごすにも最適です。ただし観光客は多め。

一人旅よりもむしろ友人や恋人、子どもを連れたファミリーで訪れるのに最適、といった印象。歩いて2、3時間で一周できるという島内は、自転車、セグウェイに乗って移動する人もちらほら見られます。

・元祖インスタ映えスポット!
韓国では数年前まで、一眼レフが流行っていたようで、南怡島(ナミソム)も写真映えするスポットでもありました。今ではスマートフォンのカメラにだけ収める人も多いでしょうか。緑あふれるインスタ映えスポットともいえるでしょう。


[南怡島のメタセコイヤ並木]

そして南怡島といえば、やはり『冬のソナタ』。ドラマのロケ地を記念する立て看板にはヨン様ことペ・ヨンジュン扮するチュンサンと、チェ・ジウ扮するユジンが写っています。最近の姿と比べるとだいぶお若い!

このドラマが、「冬ソナさまさま」「ヨン様さまさま(※)」というほどの効果を生み出したことは、もはやいうまでもないでしょう。(※「さま」がひとつ多い!? でもヨン様は絶大!ヨン様さまさまさまです。)

内陸の海「昭陽湖」で遊覧船に乗ろう。~京春線・春川駅

もうひとつの船旅は春川郊外にある昭陽湖(ソヤンホ)です。京春線の終点となる春川駅で市内バスに乗り換え、約15キロの道のりをバスで1時間かけて移動します。

春川周辺の地域はダムが多いことでも知られており、北隣の華川には日本統治時代に建設された華川ダムがあり、春川市街地にも近い衣岩湖には近年スカイウォークが完成し新たな観光名所に。そして昭陽湖は1973年に完成した東洋最大級の砂礫ダムです。


[昭陽湖]

この昭陽湖は「内陸の海(내륙의 바다)」と呼ばれているといいますが、韓国では広い湖を表現するときにこの表現がよく用いられているようです。

ちなみに昭陽ダムの周りには、春川方面からは船でないと行くことができない、高麗時代973年創建のお寺、清平寺(チョンピョンサ、청평사)があります。

バスを降りてすぐの昭陽湖船着場へ。ここで乗船券、往復6,000ウォン(約600円)を購入し、プチ船旅のはじまりです。清平寺の入口となる船着場までは、約15分。南怡島とともに「プチ船旅」の名にぴったりの場所といえるでしょう。

ちなみにこの昭陽湖は、真冬になると凍結し、湖に穴をあけてのワカサギ釣りが楽しめます。ワカサギは韓国語では「빙어(ピンオ)」、漢字では「氷魚」と表されます。

ダムが続く東隣の麟蹄(インジェ)郡では毎年1月にワカサギ祭りが開催されるのですが、近年は温暖化の影響で開催されない年もあるようです。

船を降りたあとは、お寺まで歩いていきます。拝観料は大人1人2,000ウォン。お寺の本堂までの約30~40分は、緩やかな上り坂が続きますが、滑りにくい靴であれば、特に軽装でも問題ないでしょう。

参道には、露店が並んでいますが、そこではワカサギのフライ(빙어튀김)が売られています。このダムは様々な魚が生息しているようですが、ほかにも韓国語では「ソガリ(소가리)」というコウライケツギョも名物です。

五峰山(オボンサン)の麓、山と木々に囲まれた清平寺の本堂までの道のりには、小さな滝もあり、ヒーリング気分で歩けるのが魅力。山にあるお寺に船に乗って訪れる、という秘境感は、ここでこそ味わえるもの。


[清平寺]

お寺の境内には宝物に指定された文化財とされる建造物もありますが、願い事が書かれた色とりどりの提灯が美しく感じられます。

帰り道、余裕があれば参道で一休みしてから、再び船着場に戻ってもよいでしょう。

春川といえば、タッカルビ

春川の名物といえば、やはり「タッカルビ」。キャベツやネギなどの野菜や、お餅とともにヤンニョムで和えられたゴロっとした鶏肉が鉄板の上で焼かれます。春川のタッカルビ・マッククス

テーブルを覆うほどの大きな鉄板の上に具材を一気に乗せ、お店の人が焼いてくれるのです。春川でも場所によっては炭火焼きのお店もあります。


[春川明洞のタッカルビ]

最も有名なのは、春川明洞のタッカルビ通り。春川駅からバスで10分ほどの繁華街にあります。そのタッカルビ通りには20数軒のお店が並んでいます。清平寺から春川駅へと戻り、立ち寄ってもよいでしょう。参考:春川のタッカルビ横丁

南怡島(ナミソム)の加平船着場周辺にもタッカルビを提供するお店があり、場所にこだわらなければ、そのあたりで食べてもよいかもしれません。

この記事ではソウル近郊であり、江原道の入口ともいえる春川での「プチ船旅」をお伝えしました。

『冬ソナ』や「タッカルビ」というイメージで記憶されるのは街にとっても良いことだとは思いますが、春川の魅力はそれだけではありません。イメージだけにとらわれない旅も楽しんで頂けたらと思うのです。

※この記事は韓国・江原道公式ブログに掲載されたものです。(2017/9)




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