江陵から海列車で行ける東海市のイカ漁港、墨湖(ムコ)港
吉村剛史(トム・ハングル)
2017/08/10 改:2019/08/14
東海市は韓国の東海岸にある都市で、人口は江原道のなかで四番目に多い約10万人。市内にある東海港には、『ゲゲゲの鬼太郎』で町おこしをする鳥取・境港や、ロシア・ウラジオストックとを結ぶ旅客船も就航するほか、貨物船も多く入港します。
海岸線には海水浴場や漁港があり、一方内陸部には洞窟や渓谷といった自然が感じられる観光地もあり、海も山も満喫できる場所柄なのです。
[東海市周辺の地図]
●東海市・墨湖(ムコ)駅
海列車には正東津駅~三陟駅間の全線に乗車するのもよいのですが、「中間にある駅も見てみませんか?」というのが今回のご提案。海列車を途中で降りてしまうのもアリですが、全線乗ったあとに一般列車で戻ってみる、というのも一つの方法です。参考:韓国の海列車に乗ってみよう!~観光列車で旅する東海岸
[東海・墨湖(ムコ)駅]
42キロの海列車が走る区間の中間あたりに位置するのが、墨湖(ムコ)駅です。この墨湖駅で下車し、約20分ほど歩いたところにあるのが墨湖港。東海港よりは北に位置しますが、この二つの港が東海市の海の玄関口です。
墨湖港からは鬱陵島行きの船が出ており、多い日で1日3000人の旅客がココを経由するのだといいます。墨湖港を訪れてみると、漁港にはたくさんのランプを付けた漁船が停泊しているのを見かけます。これがイカ漁船なのです。
[停泊するイカ漁船]
「墨湖」という地名の由来は、この周辺の海が墨のように黒いことが由来だといいますが、それには海が深いことが影響しているようです。そんな墨湖港の近海にはイカが多く生息しています。
江原道・東海岸はイカが名物。江原道の海沿いの市場に出かけると、乾燥したイカが吊るされているのをよく目にします。なかでも江陵・注文津(チュムンジン)港や、この墨湖港あたりが有名です。夜になると数多くの漁火が灯る様子を目にすることになるでしょう。
[イカの絵柄が描かれた墨湖市場]
ただし近年は気候の変動などにより、イカの漁獲量が大きく減少しているのだとか・・・。
●港にある活魚販売センター
時刻は朝8時ごろ。澄んだ空気のなか、水揚げされた活魚が売られています。ドライブでここを訪れた人も多いのか、観光客の姿もちらほら。キャリーケースを持っている人は鬱陵島へ旅する人でしょうか。
[活魚販売センター]
韓国のほかの地域の市場と比べると、あまり売り込もうとする感じがせず、心なしか静かな印象を受けます。そしてチャプチャプと水の音がする青い桶や水槽では、イカのほか、サバやヒラメ、ブリなどの活魚が泳いでいるのです。
購入したあとに別途料金を払うと、買った魚をさばいてもらえる場所もあります。在韓の方は買ってさばいてもらってから、持ち帰ってもよいかもしれません。
●ひとり旅なら、港の通りの刺身店で「ムルフェ」を!
以前の記事で、江原道の東海岸に続く道のことを、わたしは「刺身街道」と呼んでいますが、この街道沿いの名物は、刺身に水をかけて食べる「ムルフェ」です。参考:韓国東海岸の「刺身街道」を行く
墨湖港周辺には、数多くの刺身店が並んでいます。場所が港であるだけに、朝早くから営業しています。大勢で出かけたら、カニを注文したり、ヒラメを丸ごと一匹注文したりと愉しめそうですが、ひとり旅だと、それは難しいでしょう。
・ハンアリ・ムルフェ(항아리물회)
そこで東海岸名物の「ムルフェ(水膾、물회)」を注文することにします。刺身の上に、酢コチュジャンを溶かした水に薬味を加え、冷たい汁をかけて食べます。汁はある程度凍らせてあることも。
[ハンアリ・ムルフェ 15,000ウォン]
こちらの写真は「刺身街道」の記事でもお伝えした通り、ハンアリ(壷)の形をした器に入ったムルフェ。ちなみに、ネンビ(鍋)に入ったネンビ・ムルフェを提供する店もあるようですが、同じような刺身店が並んでいるだけに、それぞれ特徴を出そうとしているのでしょう。
こちらのお店でのムルフェの刺身はメナダとニシン。メナダは初春に旬を迎える魚ですし、ニシンはムルフェの具材としては珍しいと思います。
・イカのムルフェ(オジンオ・ムルフェ、오징어물회)
墨湖港を訪れたら、名物のイカのムルフェも味わってみたいもの。墨湖港でお店を続ける「40年の伝統」を掲げた店に入りました。このお店では、イカとカレイの刺身が入っており、このお店では氷水の汁と別々に出てきます。
[オジンオ・ムルフェ 10,000ウォン]
サラダのように野菜がのっていますが、最初にそのままイカを味わってみてもよし、最初からひんやりした汁をかけて味わっても良し。
[汁をかける前]
汁をかけたあとが下の写真。温かいご飯とともに、刺身が入った冷たい冷製スープを頂きます。暑い夏にもぴったり!冷製スープのような食べ物です。
[汁をかけたあと]
●墨湖灯台へ
そして墨湖港を訪れた際には、高台にある灯台に登ってみましょう。ここへ登ると港が一望できます。港の後ろには山々が連なり、港に漁船が停泊しているのが良く見えます。
なかなかの眺望スポット。冬の時期にこの高台を訪れると、うっすらと雪化粧した街並みを眺めることができるようです。
[高台からは港を一望できる]
わたしが訪れたのは菜の花が咲く季節でした。しかしここは江原道。まだ冷たさの残るひんやりとした風が顔にかかります。澄んだ空気のなかで、眺める墨湖港の街並みはとても美しく感じられました。
そんな東海市・墨湖港。「食べものだけでは物足りない!」という方々のために、次回の記事では、東海市にやってきたら訪れるべき、観光スポットをお伝えします。参考:灯台や洞窟がロケ地のあの場所!~SNS映えもする東海市の素敵スポット
★墨湖港へのアクセス
ソウル・清涼里駅からは列車で約5時間。江陵駅から正東津駅までは列車出発時刻にあわせシャトルバス利用(約30分、1日11本)。江陵・正東津駅からは墨湖駅までは約20分(1日11本・海列車含む)。
※この記事は韓国・江原道公式ブログに掲載されたものです。(2017/8)
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吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール