韓国のユニークな市場へ行こう!GOGO SING!
 吉村剛史(トム・ハングル)
 2015/07/25 改:2016/12/21 

韓国旅行に訪れたら、立ち寄ってみたいのは庶民の台所、市場(シジャン)。はじめてソウルを訪れる方々は、まず南大門市場や広蔵市場に出かけるでしょうか。リピーターの方々は、他の市場に立ち寄ってみたくなるはず。

大規模な市場(シジャン)、例えばソウルにある鷺梁津水産市場や可楽市場などは、卸売市場として機能しており、日本でも「市場(いちば)」といえます。

しかし住宅街など地元に密着した市場は、日本でいえば「商店街」にあたります。卸売市場も、商店街もまとめて市場、というわけです。また在来市場(ジェレシジャン)と呼んだりもします。

また、タイトルの”GOGO SING!”とは、ハングルで書くと”고고씽(ゴゴシン)”となりますが、シングは「びゅーん」などという風の音を表しています。

韓国の都市部では、大型スーパーマーケットが増えたことにより地元の市場が危機にさらされています。日本でも状況が似ており、商店街の活性化策が練られています。

そんななかユニークな取り組みでお客さんを呼び込もうとしている市場があり、外国人観光客にも人気。今回は、そのような取り組みが行われているソウルと仁川の市場をピックアップします。

ソウル・通仁市場のお弁当カフェ

ソウル・景福宮の西側のエリア、西村(ソチョン)に位置する、通仁市場(トンインシジャン)。観光市場とは一味違った地元ローカルな市場です。

ここで2012年1月に始まったユニークな取り組みが、お弁当カフェ(도시락카페、トシラクカペ)でした。

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通仁市場には惣菜を販売する店が多いのですが、それに着目して考案された取り組みです。市場内にある顧客満足センターで5,000ウォンを支払って市場内で使えるコイン10枚と容器(弁当箱)を受け取ります。

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これらを持って市場内を散策し、あれこれと食べたいものを探しましょう。コイン1枚は日本円にすると50円くらいの感覚でしょうか。

市場内でお弁当カフェに加盟している店舗で、そのコインを使って購入すると、容器に惣菜を入れてくれるのです。(※コイン2枚分のおかずもあり)

おかずを購入して、市場の2階にある食堂で食事をするのですが、最後にご飯とスープを購入します。コイン2枚分が必要なので、4枚は手元に残しておきましょう。

以下の写真がお弁当の例。コイン8枚分でおかず、2枚でご飯を購入した例がこれ。おかずの量が多いので、見栄えがよくみえます。

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韓国の地元ローカルな市場を歩いて見ると、このように惣菜のお店がたくさんあります。けれどもバラ売りを行っていないため、観光客がふらっと立ち寄って購入するには少々難しいシステムでした。

この取り組みによって、気軽に市場の惣菜を食べることができるようになったのです。私たち観光客にとっても嬉しい取り組みですし、市場の活性化にもつながるというわけです。

通仁市場のお弁当カフェや、その他グルメ、周辺スポットなど詳しくは通仁市場のお弁当カフェ&油トッポッキ

●通仁市場へのアクセス
地下鉄3号線景福宮駅2番出口徒歩7~8分。

仁川・新起市場の小判

仁川の新起(シンギ)市場では、市場が発行する小判で買い物ができるユニークな取り組みをスタートさせ、近年外国人観光客に人気を集めています。※新基市場という表記もあり。

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駅からは少々遠く車で10分ほどのところに位置するのですが、仁川空港からのトランジットツアー客を対象にした無料バスのほか、外国人ツアーバスなどが訪れてにぎわっているのです。

基本的にはツアーで訪れる外国人観光客を対象としています。市場にある駐車場の2階の事務所に行き、パスポートを見せると500ウォン(約50円)の小判6枚を受け取ることができます。

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なんと3,000ウォン分が無料でもらえてしまうのです!私が思ったのは「これぞ韓国!」。韓国は外国人に対してとても親切なお国柄なのです。

この小判を利用して市場内の加盟店で買い物ができる、というシステム!市場のあつあつフードを食べてみたりして歩いて見ましょう!市場内には伝統工芸などの体験学習のコーナーもあり、これも小判で支払うことができます。

また、市場内も外国人観光客が一目でどんな店なのかがわかるようにするため、お店にはこのような目印がつけられています。これによって一発でわかるように工夫がされているわけです。

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この取り組みは、近くに大型スーパーなどが増加したことにより、市場が危機にされされたことが契機となっています。何とか市場にお客さんを呼び込むために始まった策だったわけです。

今回市場の取材にご協力をいただいたのは、仁川の名物・アンコウ料理店のオーナー・韓重澤(ハン・ジュンテク)氏。「ソンジンムルトンボン」は、仁川のこの近辺の人なら誰でも知っている有名なお店です。 参考記事:仁川アグチムの名店「ソンジンムルトンボン」

地元仁川にお住まいの韓重澤氏に、市場の路地裏のお店として教えていただいたのは、練炭プルコギのお店。コチュジャン味と醤油(カンジャン)味の二種類があり、お店の前のガスバーナーで焼いてくれます。

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気になる方はこちらも探してみてください。

●仁川・新浦市場
地下鉄1号線(京仁線)朱安駅からタクシー約10分

仁川・新浦市場(シンポシジャン)も注目!

この取材の合間に立ち寄ったのは、東仁川駅から徒歩約5分のところにある新浦市場(シンポシジャン)。私は2010年春にもここを訪れていますが、その時に比べても大きく変化した様子がうかがえました。

新浦市場(シンポシジャン)は、1890年代から続く歴史ある市場。日本史の教科書にも出てくる日朝修好条規により、仁川が開港して以降に形成された市場で、海外からの新しいものが持ち込まれてきたわけです。

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賑やかな新浦市場

近年、韓国では中国人観光客が増加傾向にあり、この数年の間に日本人を上回っています。少し離れたところには中国・青島などとも連絡船が運行する仁川港・旅客船ターミナルがあり、中国人観光客が多いのです。

ちなみに新浦市場では、揚げた鶏肉を甘辛ソースで炒めたタッカンジョンが有名。タッカンジョンを売るお店には行列ができていました。

市場で売られている食べものも、肉まんのようなマンドゥ(餃子)など中国人が好みそうなもののほか、他の市場にはないような比較的斬新なものが売られていたりします。

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タコの足を串刺しにした屋台フード

新しいものを受け入れる風土がある仁川の新浦市場(シンポシジャン)。週末、大きな賑わいをみせるので立ち寄ってみても面白いかもしれません。

●仁川・新浦市場
地下鉄1号線東仁川駅から徒歩5~7分

ソウル・仁川のおすすめ市場は、他にも!

地元感があるとよいけれど、観光客が訪れるところが安心!という方は、ソウルの広蔵市場がおすすめ。参考:広蔵市場のグルメ

ソウルで海産物を味わうなら鷺梁津水産市場、地元ローカルに焼肉を味わいたい方なら、馬場畜産物市場がおすすめ。また、仁川ならば蘇来浦口(ソレポグ)にある市場が適しているかと思います。参考:蘇来浦口を歩く


 

記事に関連する韓国観光エリア情報はこちら:西村仁川



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トム・ハングルの韓国旅行ひとこと
日本での生活のなかでも、かつてより商店街を利用する機会が減ったという方も多いのではないでしょうか。その理由の一つとしてショッピングモールやスーパー、コンビニ等が増え、買う場所の選択肢が多くなったことにも起因するでしょう。

ただスーパーに負けまいと、値引きで対抗する市場もある一方、外国人観光客の誘致で活性化を試みる地域もあります。私たち観光客にとっては「韓国の市場を満喫できる!」という楽しみいっぱいなのですが、ユニークな取り組みの裏にはこのような背景がある、ということも頭の片隅に入れておくと、旅に深みが増すはずです。



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