捕鯨の町、蔚山(ウルサン)・長生浦へ
 2011/08/07 改:2011/08/07 吉村剛史(トム・ハングル)

「どうして街中にこんなに大きい観覧車が…!?」

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と驚くやいなや、蔚山市外バスターミナルに到着した。
釜山・老圃駅前にあるターミナルからはあっという間、わずか50分の道のりだった。

今年の初め、地元の方から蔚山では「鯨肉が有名」という話を聞きつけ、
それがきっかけとなって蔚山までやってきたのである。

蔚山(ウルサン)広域市は人口111万人を超え、
韓国屈指の大企業である現代グループのお膝元としても知られる工業都市である。
文禄・慶長の役で毛利秀元らが築城した城跡があることでも知られている。

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そして、バスターミナル周辺の三山洞(サムサンドン)は観覧車や映画館、
ロッテ百貨店や現代百貨店などの繁華街として栄えている場所である。
高速バスターミナルと市外バスターミナルが道路を挟んで隣接しているのも特徴だ。

さて、今回の目的はクジラだ。鯨博物館のある長生浦(ジャンセンポ)を目指す。
バスに乗るときいつも気をつけるのは逆方面行きに乗らないようにすることだ。
念のため、観光案内所でどこからバスに乗ればいいかを尋ねておいた。

時刻表が置いていないのはふつうだが、何分間隔で発車するかの表記もない。
バス停にいる乗客はどんどん入れ替わるので、不安は増すばかりだ。
あたりを見回すと鯨のキャラクターがバス停などに描かれている。

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長生浦の捕鯨の歴史は1891年まで遡る。
ロシアの皇太子、ニコライ2世が設立した会社がクジラの漁業権を得て
長生浦でクジラの解体作業を行ったことが始まりである。

その後、日露戦争に勝利した日本が
捕鯨の整備をしていくなかで長生浦がその中心地となったが、
解放後に韓国人の共同出資によって会社を設立し、捕鯨を行うようになったという。

やっと246番のバスがやってきた。あわてて財布から紙幣取り出し乗り込んだ。
待ち時間は20分ほどであったが、見知らぬ土地で待つのは長く感じられる。
バスは勢いよく蔚山の街を走り出す。

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15分ほどで市街地から抜け、コンテナや倉庫、ドラム缶が並ぶ工場街に入る。
道路沿いの塀には子どもたちが描いたのだろうか、クジラの壁画が並ぶ。
子どもがクジラと遊んでいたり、クジラがボールで戯れていたりする絵は愛らしい。

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工場街を通り抜け、開けたところに大きな建物が見えてくる。
それが長生浦鯨博物館であった。
(続)

参考資料:한국관광공사 『대한민국 대표 음식 이야기』(넥서스BOOKS 2009年)
     長生浦鯨生態体験館展示資料
バスを降りるとクジラ料理の店がずらりと並んでいる。
道路を挟んだ向かい側には鯨博物館があり、
そのすぐ裏手には蔚山湾、対岸は工業地帯でタンクや煙突ばかりの光景だ。

貨物船などが往来する狭い水路のような海を眺めていると
どこからかノリのいい音楽とともに「わーぁ」という歓声が聞こえてくる。
どうやら停泊している旅客船のようなのだが、それにしてはあまりにも賑やかだ。

気になって近くまで行ってみると、クジラの絵が描いてある大きな船があった。
大勢のお客さんが乗り込み、まもなく出航するか、というところである。
MCの女性の声や拍手があたりに響き、出航を前にして大賑わいだ。

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ここから出る船はクジラ探査の遊覧船なのだという。
長生浦を出発すると蔚山湾を出て東海(日本海)へ。
3時間かけてホエールウォッチングができるのだとか。

私も乗れるのだろうか…と気になり、
尋ねてみると「きょうは団体専用です」といわれてしまった。
どうやら通常は土日だけの運行だという。

今回は粘ってみることもせず早々とあきらめ、
博物館を見学することにした。

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チケット売り場では鯨博物館、鯨生態館、
そして4Dシアターのチケットが販売されている。
3つセットで購入すると1000ウォン引きとなるのでそちらを選んだ。

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まずは4Dシアターの時間が近いので生態博物館へ。
入ると水槽には様々な魚たちが泳いでおり、水族館の様相だ。
大きな水槽のトンネルを見上げるとイルカが悠々と気持ち良さそうに泳いでいる。

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4Dシアターはなかなかの見ものであった。
最近ではおなじみとなった3Dのメガネをかけシートに腰掛ける。
さて上映が始まった。海底探査のお話だ。

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海を泳ぐ魚が自分にぶつかってくるかのように通過すると
思わず3Dメガネを外したくなってしまうほどの迫力である。
時にはシートが揺れ、するどく吹き出すエアに足を刺激される。

さらには水しぶきまでもが顔にかかるなんてことも。
けれどもそんな4Dの世界に浸るのもつかの間。
あっという間の海底旅行であった。

シアターを出ると、今度はイルカのショーが始まるという。
先ほどくぐったトンネルのうえがステージになっているのだ。
家族連れや団体客がいっせいに集まってきた。(続)

ギャラリーにはその左右から続々と人が集まってくる。
まもなく「イルカショー」が始まるのだ。

クジラ生態体験館で「イルカショー」というのは、
ちょっとした違和感を感じてしまうが、イルカとクジラの区別はあいまいだ。
体長によって区別するものらしいのだが、とにかくわかりにくい。

韓国ではクジラが「コレ(고래)」イルカを「トルゴレ(돌고래)」と呼ぶのだが、
字面どおりに解釈すれば、同種の生物だとみなしているのだと思われる。
長生浦のパンフレットをみても、ここにいるのがどちらなのか今ひとつはっきりしない。

ミュージックがスタートすると、
水槽のなかのイルカたちもショーの始まりを察知したのか
水面付近まで浮き上がり、潮を吹いて動き回る。

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そして舞台に男女2人の飼育員の方が上がると、
イルカが近づいてきて垂直に水面から顔を出し、
ひれでハイタッチをする。

イルカが再び水中に戻っていくと、
今度は空に向かってアーチを描くように大きくジャンプする。

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「ザボーン!」

と水しぶきをあげて潜り込むと
次のイルカも同じように空中で弧を描く。
大人も子どもたちも、わぁ!と歓声を上げる。

音楽にあわせて動くイルカ、
人を恋しがるかのように「ギュー」っと独特の鳴き声をあげるイルカはかわいい。
客席にいる子どものように、私も童心にかえった気分になり心が躍る。

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水族館でショーを見るなんて何年ぶりのことなんだろう、
と思いつつ、熱中して見入ってしまうほどの曲芸だった。

さて、クジラ生態体験館、クジラ博物館の外には
クジラ料理の店がずらりと並んでいることは前にも述べた。

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しかし生態体験館でクジラと同種の生き物であるイルカのショーを見たあとに
クジラ料理を食べるというのはなんとも言い難い気持ちになる。
水族館の前に刺身店があるのと似てはいるが、それとも何か違う気がする。

さて、クジラ料理の店のメニューにあるのは主に刺身である。
メニューには見たことのない単語が並ぶのだが、
それらはクジラの部位である。

牛肉の味に似たユッケ(육회)がクジラの腹の肉。
ウネ(우네)は胸の肉で、オベギ(오베기)は尾ひれを塩漬けにしたものなどがある。
モドゥム(모둠)を注文すると様々な部位の盛り合わせが出てくるのである。

値段は通常の刺身よりも高価である。
私が行ったお店ではモドゥムが大で100,000ウォン、小が60,000ウォンである。
各部位は30,000ウォンから40,000ウォン程度だ。

今思うと後悔しているのだが、私は刺身を食べなかった。
60,000ウォンなのでレートを考慮しても5,000円弱なので
手の出ない値段ではなかったのだが、躊躇してしまった。

値が張るというのももちろんなのだが、
1人で刺身を囲むのには少し量が多すぎると考えたことも理由である。

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そこで注文したのはコレチゲ(クジラのチゲ)である。
小20,000ウォンなのだが、1人分にしてはかなり大きい鍋で出てきた。
野菜がたっぷり、そしてなかにはクジラの肉も一緒に煮込まれている。

豚肉でも牛肉でもない、そして魚でもないというちょっと変わった食感。
クジラのベーコンは日本で食べたことがあるが、煮込んだクジラの肉は初めてだ。
美味しいか?とたずねられると、正直そこまでではないのだが。

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だが、長生浦にきたら名物料理であるクジラの刺身盛り合わせであるモドゥム、
そしてコレチゲを一度召し上がってみるといいだろう。
私のように1人で行くのもいいのだが、2人以上で食べに行くのがおすすめである。

クジラの港町、長生浦。
1986年以降、積極的にクジラ漁を行うことができなくなったが、
この地に根付いたクジラ文化にぜひふれていただけたらと思う。(完)

参考資料:한국관광공사 『대한민국 대표 음식 이야기』(넥서스BOOKS 2009年)
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長生浦 コレバダ(고래바다)旅行船
3時間のクジラ探査コース(4月-11月 9:30-12:30・土日のみ)と
2時間の沿岸夜景コース(3月,6月-9月は19:30-21:30、11月は18:30-20:30・土曜のみ)がある。
料金はクジラ探査コースが大人20000ウォン、沿岸夜景コースが15000ウォン。
http://whale.ulsannamgu.go.kr/

鯨博物館、鯨生態体験館、4Dシアター
入場券販売:9:30-17:00,観覧時間:9:30-18:00
休館日:毎週月曜日、元旦、ソルラル、秋夕
料金:3つセットで9000ウォン

長生浦 クジラ文化特区
http://www.whalecity.kr/
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トム・ハングル(吉村剛史)
吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。韓国旅行・地方旅の総合発信者。2012年に韓国文化誌『スッカラ』でデビュー、その後韓国旅行、語学Webの編集・ライターを経て、講座、トークイベントでの発信も。これまで韓国100市郡以上を踏破。平昌五輪開催の江原道公式ブログにも寄稿中。プロフィールお問い合わせ


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