韓国焼酎「鏡月」のゆかりの地、江陵・鏡浦台へ行ってみた
吉村剛史(トム・ハングル)
2014/04/06 改:2019/05/15
東京でもソウルでお花見シーズンのこの頃。韓国のお花見はお酒を飲んでドンチャン騒ぎ、ということはあまりありませんが、日本では桜の木の下でお弁当を食べたりお酒を飲んだりしますよね。そんな季節にふさわしい話題をチョイスしてみました。
韓国では眞露(JINRO)?
「韓国ではお酒は眞露(JINRO)なの?」身近なひとのあいだで「韓国通」と思われていると、お酒の席で一度は聞かれるであろう、この質問。
しかし、実際は日本で販売されているJINROとは異なり、350mlの小瓶で甘味料が入った焼酎を冷やしてストレートで飲むのが一般的。最近はドラマなどの影響で、韓国に特段の関心を抱いているわけではない人にも知られてきたように思います。
焼酎のなかでも話題にのぼりやすいのが、韓国焼酎の「鏡月」。つい数年前まで「鏡月グリーン」という名前で販売されてるのがメインでしたが、ここ最近アセロラや柚子の風味を加えた「ふんわり鏡月」シリーズが発売されるようになりました。
さらに梅味が追加で発売され、女優の石原さとみさんがCMに登場しています。以前は韓国の女優カン・イェソルさんが広告モデルだったこともありました。
「サントリーが「ふんわり鏡月」に梅味追加 氷入りグラスに注ぐだけのシリーズ増強」(産経MSNニュース) 2014.2.25
韓国ではいちども見たことがない「鏡月」
しかし、その「鏡月」は私は韓国で一度も見たことがありません。現在韓国では販売されておらず、韓国のロッテ酒類が輸出しサントリーが販売しています。「鏡月」と漢字で書くと、何か美しそうだとを予感させますが、その由来はいったいどこにあるのか、調べてみました。
「鏡月」というその名前は韓国/東海(日本海)に隣接した湖 、「鏡浦湖」(キョンポホ)のほとりにある古い楼閣「鏡浦台」(キョンポデ)で、恋人と酒を酌み交わしながら、そこから見える5つの月を愛でた詩に由来しています。 (鏡月グリーン製品紹介より引用)
鏡浦台は韓国・江原道にある月見の名所。関東八景(※)のひとつとして知られています。ここでは陰暦1月15日、いわゆる年初めの満月にあたる小正月(テボルム)の月が美しいといいます。
上で引用した月をめでた詩の「5つの月」とは、「空と海、湖、酒の杯そして、恋人の目に映る月」。それにしても実にロマンチックではありませんか。
「韓国の東海岸にある湖の楼閣、鏡浦台」それはいったいどんなところなのか見てみましょう!
韓国焼酎「鏡月」ゆかりの地へ実際に行ってみた
「百聞は一見にしかず」ということで、旅に出かけて見ずにはいられません。鏡浦台(キョンポデ)とはいったいどんなところなのでしょうか?
ソウルから直通バスで約2時間半、私は迂回ルートの市外バスに乗り、さらに渋滞に巻き込まれ約4時間かかり、はるばると東海岸の都市までやってきました。
江原道(カンウォンド)にある江陵(カンヌン)。江原道の「江」はまさにこの都市を指します。「原」は原州(ウォンジュ)のこと。到着した江陵バスターミナルから市内バスに乗車し、海の方向へ。
日本の5000円に相当する韓国の最高額紙幣、5万ウォン札の紙幣の肖像にもなっている申師任堂(シンサイムダン)の生家「烏竹軒(オジュッコン)」や江原道に残された朝鮮時代の上流階級の家「船橋荘(ソンギョジャン)」を過ぎ、ターミナルから20分ほどで鏡浦湖(キョンポホ)に到着します。
桜が満開の鏡浦湖のほとり
江陵の鏡浦湖(キョンポホ)と、鏡浦台(キョンポデ)
2013年の4月上旬にここを訪れた私ですが、バスを降りると一面満開の桜。桜の木が湖の周りにたくさん並んでいるのです。ちなみに少し歩いていくと、鏡浦台(キョンポデ)の楼閣が見えてきます。
そしてここに上ってみると、目の前には湖が一面に広がります。そして春なので、道路と湖のあいだをわける桜の花も満開です。水面はゆらゆらと揺れています。この日はお祭りが開かれていたので人も多かったのですが、ふだんはきっと静かな湖なのだろうと思います。
鏡浦台からみる鏡浦湖
もし満月の夜、月を眺めるのもきれいなのだろうと想像したいところですが、詩の内容をもう一度みてみることにしましょう。「空と海、湖、酒の杯そして、恋人の目に映る月」。
「空」や「湖」に浮かぶ月は、理解がたやすいでしょう。お酒を持ってくれば「酒の杯」には月が浮かぶでしょう。
愛する人をつれてくれば「瞳に映る月」も見えることでしょう。果たして「海の月」というのはいったいどこで見られるのでしょうか?
詩のなかにある「海の月」はどこに?
さて、地図を見てみることにしましょう。
(GOOGLE MAPより)
中央部に見える湖が、鏡浦湖。そして東側に広がる海が、日本海(韓国名:東海)です。この湖はなんと海に面しているのです。もともとは海と湖がつながっていたのですが、長年の堆積によって、双方が分かれた地形になっているのです。
これを「潟湖(せきこ)」「ラグーン」というのですが、韓国の東海岸の特徴のひとつで、地図をみるとこのような場所が多いのです。
つまり「海」と「湖」が詩の中に同時に出てくるというのは、この距離の近さに答えがあるといえるでしょう。ふつうの場所では「海」と「湖」が同時に詩の中に出てこないはずですから。しかし、私が鏡浦台に上がってみたときは、海岸の木に邪魔されて海は見えませんでした。
果たして詩が詠まれた当時は海が見えていたのか、それとも・・・。見えたらさぞかしロマンチックだろうと思いつつ、見えそうで見えないことに、奥ゆかしさを感じたのでした。このところ「ふんわり鏡月」が話題になっていることを踏まえた、韓国焼酎「鏡月」のひみつを探る、トム・ハングルの韓国旅行コラムでした。
<アクセス情報>
鏡浦台(ギョンポデ)
東ソウルバスターミナルから高速バスで約2時間30分。
江陵バスターミナルから市内バス(202番)に乗車し、およそ20分。
<お祭り情報>
鏡浦さくら祭り
2014年4月14日~4月20日
2015年4月3日~4月10日
2016年4月2日~4月8日
鏡浦湖一帯で開催
(※)韓国の関東とは、江原道平昌郡・大関嶺(テグァルリョン)の東のことを指します。
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吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール