ソウル・皇后名家で夏の補身食、参鶏湯・醋鶏湯を食す
吉村剛史(トム・ハングル)
2014/08/11 改:2017/10/17
暑い夏に食べる韓国料理、といえば「参鶏湯(サムゲタン)」。若鶏のなかにもち米やナツメ、高麗人参などの韓方食材(漢方)を詰め込んで、それを鍋のなかで煮て食べる夏の補身食です。なかには数十時間かけてぐつぐつと煮込むお店もあります。
夏には参鶏湯、というのは毎年繰り返されている話なので、韓国に関心がある方からは「もうそんなこと知っているよ!」という声が聞こえてきそうですが、今回紹介する料理はご存知でしょうか。
夏の韓国旅行で食べていただきたい料理、醋鶏湯(チョゲタン)を紹介したいと思います。
夏の珍味!醋鶏湯(チョゲタン)
昨年の初夏の時期、醋鶏湯(チョゲタン)という料理の存在を知った私は、ソウル・景福宮の西側にある「皇后名家(旧・皇后参鶏湯)」に出かけました。
観光ガイドブックには必ず登場する参鶏湯専門店の名店、土俗村(トソクチョン)の近くにあるお店です。この場所に「参鶏湯通り」を作ろうとわざわざ仁寺洞から移転してきたという噂があります。
このお店自慢の料理は活アワビや山参、冬虫夏草が入った皇后参鶏湯(38,000ウォン)。一人前でこの値段となると、さすがに注文するのをためらいますが、それだけ豪華な食材がごろりと入っているのです。
それは特別なときに食べることとして、やはりお目当てのチョゲタン(醋鶏湯)を注文しました。※写真の参鶏湯はほかのときに頂く機会があり、そのときに撮影したものです。
このお店の醋鶏湯(チョゲタン)は氷の粒が浮いた白濁で、中央にはゆでた鶏肉やキュウリなどがのせられています。
醋鶏湯は「湯」とは書いてあるけれども、冷たいスープなのです。少々酸味が強く、からしがきいていて、一口食べてみると酸っぱさと同時に、からしのツーンとした刺激が鼻に抜けます。夏の火照った体を鎮めてくれそうな、そんな料理です。
チョゲタンは風流さも豪華さも最強クラス!?
さてチョゲタンとはどんな料理なのでしょうか。ひとつひとつ見ていきましょう。漢字で書くと「醋鶏湯」。
「醋」という漢字を辞書で調べてみると、「酢」と同じ項目に「酢酸を含む,すっぱい液体調味料(・・・中略・・・)食酢。(大辞林第三版より引用)」と書かれています。つまり、お酢の意味。鶏はいうまでもなく「鶏」、湯は「スープ」ですから、「鶏の酸味ある冷製スープ」といったところでしょうか。
料理の説明には「夏の宮中料理」と書かれることが多いのですが、「済州タンゴルソシク」という刊行物の記事を読んでみると、チョゲタン(醋鶏湯)は、もともと平安道や咸鏡道の冬の料理で、これが宮中料理となり、明月館という料亭を通して民間に流れた、と書かれています。1930年代の民間向けの料理本で紹介されていたそうです。(→済州タンゴルソシク 2014年6月25日 韓国語)
チョゲタンは贅沢だ!?
昔はキノコ、ナマコ、アワビまでが入っていたと書かれていますが、このレベルになるとさすがに宮中だからできることでしょう。
今でこそアイスやらパッピンスやら、冷たい食べものがありふれていますが、そもそも冷蔵庫がない時代の「夏に冷たいものを食べる」こと自体がかなり贅沢なことに違いありません。しかも、朝鮮時代に夏のソウルでアワビを食べるなんて最強すぎます!
醋鶏湯(チョゲタン)には麺を入れて食べてもOK。実はこれが一番食べたかったのです!麺好きにとってはたまりません。鶏の酸っぱくてツーンとからい冷製スープに、少々太い麺を入れて食べるなんて。このお店では少々太めの小麦粉の麺が使われています。
その後コリアン・フード・コラムニスト八田靖史さんにお会いしたときに聞いてみたら、乙支路3街の平来屋で食べられると教えてくださって、その後Web記事としてまとめていらっしゃいましたが、他のブログなども含めて写真を見てみると、冷麺の麺で食べているところが多いようです。(→LIVING くらしナビ 2013年6月17日)
私としては小麦粉の麺のほうが好みなので、こちらのほうが好みなのですが、次の機会には他のお店でも食べてみようと思います。8月7日の立秋を過ぎ、暑さは一段落したけれど、残暑が残るこの季節、韓国旅行に出かけて醋鶏湯(チョゲタン)を見かけたら、夏の補身食としてぜひ召し上がってみてください。
皇后名家(皇后参鶏湯の地図)
住所:ソウル特別市鍾路区紫霞門路6キル6(通義洞)
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・醋鶏湯(チョゲタン)の冷たさと酸味は夏の暑さを吹き飛ばしてくれます!
・皇后名家の醋鶏湯は数人で分けて食べるのがちょうどよいです。
・私はこのサイズを一人で食べたのですが、氷と酸味とからしで体は氷点下に・・・。
・「こんな上品で風流な料理があるんだ」という感動は忘れません!
吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール