安東(アンドン)旧市街地から陶山書院をめぐる~安東ダム周辺の観光地
吉村剛史(トム・ハングル)
2024/12/18 改:2024/12/26
安東(アンドン)といって思い浮かぶもの、よくご存じの方は「河回村(ハフェマウル)」や「チムタク(鶏の辛煮)」などが挙げられるのではないでしょうか。
安東は韓国人の精神を支える儒教文化が栄え、それが続いてきた地。その魅力を1日ですべて満喫することは難しく、数日滞在しながら過ごせれば理想的だと思います。
この記事では安東のなかで東側に位置する旧市街地方面であり、観光地にもなっている安東ダム周辺をじっくり解説していきたいと思います。
玄関口は安東駅・安東バスターミナル
安東駅まではソウルからKTX-イウムで約2時間30分、ソウル・江南ターミナルからバスでは約2時間40分所要です(東大邱ターミナルからは1時間20分)。韓国の内陸部に位置するため、ある程度の時間をとっての旅をおすすめします。
その玄関口となるのは、安東駅。または安東総合バスターミナルです。安東駅は2020年に現在の場所に建てられてましたが、駅とバスターミナルは隣接しています。
【安東駅 (著作権フリー写真 Wikipedia)】
韓国の地方都市では駅とバスターミナルが隣接しているところはそれほど多くはありませんが、安東駅はその点でも利便性が高いといえます。
【安東市外バスターミナル(2013年撮影)】
個人旅行の場合は、駅からは市内バス、またはタクシーに乗って出かけましょう。グループ旅行として5人以上集まる場合はシティーツアーの予約も可能です。
【安東市内の地図】
市内は上の地図のような位置関係となりますが、公共交通を利用して1日で安東河回村と陶山書院の両方を回ることは難しいといえます。通常でタクシーに乗ると費用が高額になりがちなので、グループの場合はタクシーを1日借りるという計画も必要かと思います。
1日じゅう安東で過ごせる場合は午前から午後にかけて安東河回村を回り、夕方から夜にかけて安東市場・安東ダム周辺を巡るプランなら、比較的無理なく過ごせるはずです。
安東ダムの月映橋:夜はライトアップ
韓国最長の川である洛東江(낙동강、ナクトンガン)にある安東ダム。その安東ダムに2003年にかけられた橋が、月映橋(월영교、ウォルヨンギョ)です。
木の柵で出来ており、自然との調和が感じられます。月映橋は夜はライトアップされるので、暗くなる頃に訪れてもよいでしょう。
特に冬場は雪が降った後に訪れても風情があります。安東に来たら少しばかり散策してみてもよいと思います。
【雪のあとの月映橋(2013年撮影)】
その月映橋の前は観光客が訪れるドライブインのような飲食街になっています。このあたりで名物料理を召し上がっていただくとよいでしょう。
安東の名物・偽祭祀飯(헛제사밥、ホッチェサパプ)
安東の名物料理「偽祭祀飯(ホッチェサパプ、헛제사밥)」です。”헛(ホッ)”というのは「偽者」「まがいもの」という意味で、祭祀(제사)の時に食べる料理、なので仏教でいう精進料理にあるといえるでしょう。
祭祀はご先祖様を祀る行事ですが、祭祀のときに食べるごちそうを、祭祀以外のときにも食べたことが理由で「偽物の」祭祀ご飯という名がつけられています。
ナムルを中心としたご飯で、混ぜて食べるので基本的にはビビンパの一種だといえます。本来はコチュジャンは使わず、ご飯には醤油をかけて食べるそうです。
安東の地方では祭祀のときに「サメ(상어、鯊魚)」を用意していることが他の地域とは異なる点であり、さらには仏教とは異なり、肉食が禁止されているわけではないので料理には肉が入っています。
そして「安東シッケ(안동식혜)」です。
シッケは甘酒みたいな飲み物で、自動販売機でも売られていますが、安東シッケには大根が入っていて、さらにショウガの味が効いており、さらに唐辛子が入っていて、ピリリと辛いので不思議な感じがしますが、安東に来たらぜひ召し上がってほしいと思います。
安東旧市場の安東チムタク通り
安東の旧市街地には安東旧市場、安東中央市場、安東中央新市場といった市場街があります。15万都市の安東の中心街として栄えていますが、特に観光客に有名なのは、安東旧市場にある「安東チムタク通り」。
チムタクは鶏の甘辛煮で、安東がその発祥の地として全国的に知られています。多くの店は2~3人前以上で提供されているために、1人では食べるのが難しい料理ですが、中には「小」サイズを販売している店もあるようです。
[チムタクのイメージ(全国チェーン:鳯雛チムタクにて撮影)
とはいっても「小」を1人分とみた場合、量は多めとなりますので、できる限りグループで行ったときに召し上がるとよいでしょう。
韓国の儒教のメッカ・陶山書院
韓国の1000ウォン札にも描かれた李滉(李退渓)の功績を称えるために、1576年に建てられた陶山書院(도산서원、トサンソウォン)。2019年に韓国の書院がユネスコ世界遺産に登録され、その9か所のなかに陶山書院も入っています。
陶山書院の下のほうの建物は李退渓が儒生たちを指導した施設で、寄宿舎も生活空間でもある「書堂」があり、上のほうは「書院」の形態として建てられ、李滉の位牌が祀られています。このように両方が含まれている施設は、珍しい形態だといいます。
李退渓は1000ウォン札にも描かれていますが、陶山書院は旧1000ウォン札の裏面の図柄です。
安東ダムの北側、より奥深くまで行くと、安東で栄えた儒教文化をより深く知り、感じることができるといえます。
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吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール