北へ向かう最初の駅―都羅山
吉村剛史(トム・ハングル)
2010/11/03 改:2016/07/08
東京などをはじめとする都会に住む人は
ソウルに訪れても、日本と何も変わらないじゃないか。
と思う人も少なくはないと思います。
たしかに韓国と日本は似ていることも多い。
しかし大きな違いの1つなのは、韓国は未だに「休戦中」
極端な言い方をすれば、まだ戦争は終わっていないのです。
「南北分断」。その象徴ともいえる言葉といえば、
38度線、非武装地帯DMZ、板門店などが思い浮かびます。
是非、そのようなところを知っておきたいと思う人も多いことでしょう。
2009年9月11日。
京義線・韓国最北端の駅、都羅山駅を電車で訪れました。
2002年のNHKの放送「ユンソナの鈍行列車の旅」を
ビデオで見る機会があり、それに触発されたことがきっかけでした。
「北」へとつながる京義線。
その名前の由来は京城駅(かつてのソウル)と
中国との国境付近で平安北道(現・北朝鮮)にある新義州駅を
結んでいる路線だというところから来ています。
2002年の旧正月、
約半世紀ぶりにイムジン河(臨津江)を渡る列車が運行されることとなり。
統一への一歩、南北縦断列車の開通に向けて近づいてはいたのですが、
2010年現在、休止されています。
南北は分断されているが、実際は1つの国。
半世紀ぶりに路線が復活したというようやく一歩進んだこの出来事を
故郷が北にある韓国の方はどう受け止めていたのだろうか。
そんなことを思い巡らせながら、
臨津江駅を出発した列車はゆっくりとイムジン河を越えていき、
北へ向かう最初の駅・都羅山駅へと走り抜けます。
さて、
ここに行くにはソウル出発のツアーが無駄もなく安心なため、
ほとんどの方はツアーを利用されると思いますが、
値段も58,000ウォンとちょっと高め。
やはり「ひとり旅」ですから
少し時間がかかっても面倒でも誰にも迷惑はかかりません。
電車で行ってみることにしました。
出発はソウル駅。早起きしたため、時刻はまだ7時台。
駅舎内に入ったものの、見えるのはKTXやセマウル号のホーム。
京義線のホームは一体どこにあるのだろうかと戸惑ってしまいました。
案内所で「都羅山まで行きたい」と話すと、
ホームは南山タワーとは反対側の出口をでた外にあるとのこと。
そしてとりあえず汶山(ムンサン)駅まで行けばよいと言われ、
ようやく出発。
京義線に乗り、約50キロ。
大都市ソウルを抜け、郊外に向けて走る通勤列車。
約1時間ほど通勤列車で北上するとムンサン駅に到着です。
ムンサン駅に到着したのは午前9時前。
最北端の都羅山駅に行くためには
ここで切符を買い、電車を乗り換えることになります。
ムンサン駅で時刻表を確認し、切符を買ったところ、
10時出発のはずなのに、11時出発のものが発券。
なぜなのか?と思っていると、
親切な駅員さんは「10時出発の列車に乗って」と、
英語を交えて、アルファベット表記でメモし、説明してくれたのですが
なぜそうなのかよく理解できませんでした。
あとでわかったのですが、
10時の列車は都羅山駅の1つ前の駅、臨津江(イムジンガン)駅止まり。
直通列車で行こうとも、この駅で強制的に下車させられるのです。
次の電車は1時間後。
その間に都羅展望台や第3トンネルのツアーの手続きをし、
臨津江駅周辺を見てまわります。
離れ離れになった家族、故郷に帰れなくなった人々…
この鉄条網もまた、南北分断の象徴であると思います。
そこにはさまざまな人の思いが綴られています。
朝鮮半島の冷戦は今なお膠着状態にあります。
国が、経済がどうであろうとも、そこに生きる人々にとっては
家族と会えること、一緒に暮らせることが最大の幸せのはずです。
近い将来、この線路が南北につながり、
自由に行き来できるようになれば、とそんな気持ちを抱きながら
イムジン河にかかる鉄橋を眺めていました。
東京などをはじめとする都会に住む人は
ソウルに訪れても、日本と何も変わらないじゃないか。
と思う人も少なくはないと思います。
たしかに韓国と日本は似ていることも多い。
しかし大きな違いの1つなのは、韓国は未だに「休戦中」
極端な言い方をすれば、まだ戦争は終わっていないのです。
「南北分断」。その象徴ともいえる言葉といえば、
38度線、非武装地帯DMZ、板門店などが思い浮かびます。
是非、そのようなところを知っておきたいと思う人も多いことでしょう。
臨津江駅で列車をおり、ツアーを申し込みます。
DMZツアーの料金はわずか10000ウォン強。
ソウル駅からの交通費を加えても15000ウォンを下回るのですから、
ソウル発のバスツアーより断然安いです。
臨津江駅から歩いてすぐのところには
南北統一を願って建設された臨津閣公園。
戦車などの展示がされていたり
また売店では北朝鮮の貨幣や、平壌焼酎(ソジュ)なども売られています。
ピョンヤンとハングルで大きく記されたラベル。
北朝鮮ではどのくらい多くの人たちが飲んでいるものなのだろうか。
公園を少し歩いていると、
次の列車が到着する1時間はあっという間。
駅に戻ると軍人たちによるX線の手荷物検査があります。
「ソジュピョン?(焼酎の瓶?)」と女性の軍人の声が。
なんで焼酎の瓶をもっているのか、と疑問に思ったようですが、
男性の軍人が「そこで売っているんだよ」と言ったようで問題なくスルー。
そして列車に乗り、
イムジン河を渡るとまもなく都羅山駅に到着します。
韓国鉄道公社の新しい駅はみな同じようなデザインで、
この都羅山駅も例外ではありません。
特徴的なのは、行き先には「平壌方面」と書かれ、
そして「出境」と書かれたイミグレーションがあるところ。
いつかは南北縦断の列車が走るようになれば、この駅で降ろされ、
手続きを行うようになるのでしょうか。
남쪽의 마지막 역이 아니라
북쪽으로 가는 첫번째 역이 입니다.
「南の最後の駅ではなくて、北へ向かう1番目の駅です。」
と書かれたボードや、
鉄条網をやぶって突き進む汽車の絵が描かれていたり、
シベリア鉄道とつながればヨーロッパまで行けるという路線図もあります。
列車を降り、駅を出るとツアーバスが待っています。
そしてここから第3トンネル、統一展望台ツアーに向かいます。
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吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール