「食べる旅 韓国むかしの味」
吉村剛史(トム・ハングル)
2013/11/26 改:2013/11/26
日韓共催ワールドカップからはや11年。
2003年からは韓国ドラマが日本でヒットし、
そしてここ数年のあいだに、K-POPも大人気に。
大ブームが過ぎ去った今も、政治的にはいつまでも消えない壁があっても
人やモノ、あらゆる文化はこれまでにない量で相互に行き来しています。
その潮流に乗ってか、食べものも日韓の間を伝播し、
韓国の人たちも日本のビールをのみ、日本の食べものを楽しんでいますし、
日本でもスーパーにマッコリが並び、韓国海苔やトッポッキが売られるまでに。
きょう紹介する本は、
「食べる旅 韓国むかしの味(平松洋子 新潮社 1500円+税)」です。
☆本の説明
エッセイストでフードジャーナリストの平松洋子さんが、
ソウルや地方など、それぞれの場所の食べものにスポットをあて、
その料理と人にまつわる歴史やエピソードを、丹念に’描き上げた’本。
描きあげた、と私が書いたのは、
丹精こめて料理を作る様子や、その音、色、食感までもが
そのまま伝わってくるように描写されているからです。
タイトルにある「むかし」というのは、
何百年前の話や大衆的な歴史に基づいたものだけではなく、
代々譲り受けた土地でナムルを育てる家の話など、
それぞれの場所での人、風土、食がいっぺんに伝わってくるのです。
☆トム・ハングルの視点
平松洋子さんの自身の奥深くから湧き出てくるような洞察力が、
その食べものにまつわる人の暮らしや生活の様子を描き出しています。
本を手にとる人にまで、その場の音や声、味までが伝わってくるような
テンポのよく柔らかい文体で書き上げられています。
写真からも食材のみずみずしさや、魚のてかりまでが
手元にとどいてきて、また、ソウルの生き生きとした様子や
地方に住む人の姿が映像のようなリアリティーで手元に伝わってきます。
☆トム・ハングルがおすすめする本のメリット
「食べる旅は、ひとに出会う旅でもある」(p.74)
ごくあたりまえの、あちこちを訪れるだけでは
旅行では入り込むことができない
人々の暮らしの場にまでふみこまれていて、
わたしたち読者が、本の世界に近い光景をみたときに
この食べものの裏側にはなにがあるのだろうか?
そんなことをふと考えるようになるはずです。
たとえば食材の作り手と料理をする人々の
生き様が詰まっているのだと想像しながら旅が楽しめるはずです。
なかなか旅行者が、本と同じレベルにまで
入り込むのはとても難しいですが、市場や食堂で出会った人と
何気ない会話を交わしてみることで、この本の世界に近づけるでしょう。
食べる旅 韓国むかしの味 (とんぼの本)
(新潮社 2011年 1500円+税 5%の場合1575円)
<評価表>※評価は主観的なものです。
お役立ち度 ★★★☆☆
マニアック度 ★★★★☆
ビジュアル度 ★★★★★
リアル度 ★★★★★
オモシロ度 ★★★☆☆
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吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール