城北洞(ソンブクトン)とはどんな町か?映画『パラサイト』のロケ地にもなった高級住宅街
吉村剛史(トム・ハングル)
2021/06/09 改:2022/09/13
城北洞(성북동、ソンブクトン)とは、ソウル中心部から見て北東に位置する街。景福宮の後ろにそびえる北岳山の東麓にあたり、ソウル城郭の外側に位置しています。こんなところが「城北洞」という地名を表しているといえるでしょう。
城北洞は朝鮮時代には文人や芸術家たちが暮らしていましたが、1960年代からは政治家や財界人たちが暮らすようになり、近年は高級住宅地として認識されています。北岳山の北麓にある平倉洞(평창동、ピョンチャンドン)と並ぶ富裕な街です。
ドラマ『コーヒープリンス1号店』や、近年では映画『パラサイト』のロケ地にもなった高級住宅街として、数々のドラマにも登場する場所です。またかつて国賓接待のために使われた三清閣があり、ドラマ『食客』『宮』などのロケにも使われました。この記事では城北洞を楽しむためにご説明します。
参考:城北洞
成功した芸能人たちが暮らすソウルの富裕な街
閑静な住宅街である城北洞は、成功した芸能人たちがここに住み家を構えます。そういったスターのなかには高級マンションを購入する人も多いのですが、彼らが城北洞で家を買う場合は主に一戸建てです。
ヨン様ことペ・ヨンジュンのほか、最近ではイ・スンギも城北洞に一戸建てを購入したと報道されています。
芸能人も住むような豪邸街は城北洞のなかでも奥地ともいえる緩やかな丘に位置しており、そこに立派な家々が立ち並んでいます。これらの家々は警備が厳重で、門には警備会社のステッカーが貼られていたりするなど、その雰囲気からしてお金持ちの家という印象です。
世界的にも知られる2019年公開の映画『パラサイト 半地下の家族』では、パク社長の家としてロケが行われた場所もこうした高級住宅街です。
その他のドラマでもロケ地として登場せずとも、きわめて富裕な人たちが住む町として城北洞(ソンブクトン、성북동)の名前が出てくることも多いのです。
城北洞の奥地には日本大使公邸も
城北洞の高級住宅街の奥には、日本大使が暮らす公邸があります。日本の大使が毎日ここから大使館の施設へ通っているのだろうということが想像できます。この界隈には他の国の大使が住む公邸も存在しており、周辺は警察官が警備をしています。
ただし観光客がここまで訪れる必要は通常はないため、公邸があることをここで知って頂くだけでも十分かと思います。
城北洞へのアクセスと歩き方
ソウルに訪れる際に城北洞へ訪問するには、どのように出かけたらよいのかを解説していきます。
城北洞の最寄り駅は地下鉄4号線・漢城大入口(한성대입구、ハンソンデイプク)駅です。東大門駅からは北へ2駅にあたります。
東大門の次が小劇場がひしめき合う大学路(대학로、テハンノ)のある恵化(혜화、ヘファ)駅です。大学路について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。参考:演劇の街・大学路(テハンノ)~ミュージカルにカフェにと素敵なひとときを
[漢城大入口駅周辺]
漢城大入口駅で地下鉄を降りた後は、バスで向かいます。城北洞は城北路、三清路という通り沿いに施設や食堂が点在しているので、下車する位置は目的地によって異なります。
後述する三清閣まで行く1111、2112番バスに乗って、目的地に近い場所で下車するのがよいでしょう。
[城北洞の地図]
とくに決めていない場合は城北洞のなかでも街歩きをするのに便利な「城北初校(성북초교、ソンブクチョギョ)」や「城北区立美術館・サンダリ橋(성북구립미술관・쌍다리교)」で下車するとよいでしょう。
城北洞のメインストリートは全体的にゆるやかな傾斜になっており、バスや徒歩で訪れるときもそこを上がるようにして歩いていきます。
この道を奥まで進んでいくと格式が感じられる教会、そして寺院、ギャラリーやレストランなどがあり、周囲には緑が多いため避暑地に訪れているような雰囲気が感じられることも確かです。
道が二又に分かれるソウルタウォン学校のバス停付近には低層のヴィラが並んでおり、この通りを進んでいくにつれて富裕な住宅街の様子を感じ取れます。
城北洞とソウル城郭、そしてタルトンネ
地下鉄漢城大入口駅の近くには恵化門(혜화문、ヘファムン)というソウル城郭の小門があります。この門から城郭が連なっており、城北洞の街を歩いているとこの壁を目にします。周辺は木々に囲まれており、緑豊かな住宅街という雰囲気が感じられます。
城北洞は富裕な街として注目されることが多いのですが、必ずしもそういった町というわけではありません。城北洞のとある城郭に沿った斜面に月の街と訳される貧民街、タルトンネ(달동네)が存在していることもまた事実です。
城北洞でのグルメ・食事
街歩きのなかではおなかも満たしたいものです。城北洞(성북동)には地元に定着している様々な飲食店があります。週末に車でやってくる人もいるようです。
●城北洞テジカルビ(성북동돼지갈비)
そのなかでも庶民的な店なのが、タクシー運転手など運転手がよく訪れる「技士食堂(기사식당、キサシクタン)。(『パラサイト 半地下の家族』では半地下で暮らす家族が外食をするシーンでバイキング形式の食堂が映し出されましたが、そういった店が技士食堂です。)
このお店ではお店の前にタクシーを止めて食事をする運転手がいるので、そういった食堂だともいえます。なんと城北洞で50年の伝統を誇る練炭豚カルビのお店がここにあります。
メニューはプルコギ(불고기)、トッカルビ(떡갈비)、カルビ(갈비)の定食がありますが、それぞれ8,000~8,500ウォン。炭火で焼いたと思われる香ばしい焼肉、そして包み野菜が添えられており、そこに韓国の定食らしくおかずがついてきます。
[プルコギ定食(ペッパン) 8,000ウォン]
仕事の休憩を兼ねて手軽に食べられる豚焼肉定食。タクシー運転手も食べる庶民の味、そしてこの街で根付いてきた食堂のごはんをぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
南北会談の晩さん会のために作られた三清閣へ
城北洞の最も奥には三清閣(삼청각、サムチョンガッ)があります。ここは過去には南北会談の晩さん会の場所として作られた高級料亭で、その後一般開放されています。
自然とともに配置された韓国の伝統的な建物のなかで、韓定食や伝統茶などが味わえます。
北岳山に近く緑に囲まれているので、散策してみると韓国の建物の美しさも同時に感じられます。こういった場所で食事が味わうのもきっと旅の良い記念になることでしょう。
高級住宅街という言葉では表しきれない城北洞
城北洞は高級住宅地としてドラマや映画のロケ地としても登場しますが、富裕層が暮らす一戸建てが密集するだけの街ではありません。
朝鮮時代からの古宅のほか、過去に芸術家たちが暮らした街だけに美術館やギャラリーがあり、そして人々の暮らしの場としての教会や食堂があります。
この街を歩いてみれば、ソウルという都会に位置しながらも、いくらかの自然が感じられ、都会の喧騒を離れた閑静な街並みを存分に感じられることでしょう。
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吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール