韓国の「おへそ」はどこ?~ど真ん中はココだ!

韓国の地図を眺めたとき、その中央となる場所はどこでしょうか。そもそも「韓国」と聞くと、朝鮮半島の南半分をイメージするでしょう。

しかし朝鮮半島は、北緯38度線付近にある軍事境界線によって、南北に分断されています。現在は、双方に政府がある状態とはいえ、本来は一つの国。「江原道」が南北に分断されていることは、前回の記事(これは誇大広告!?本当の江原道の人口は?)でも触れました。

つまり、韓国の中心は、北朝鮮の区域も含めて考えなければならないのです。

そんなある日、北と南を合わせた中央、韓国の「おへそ」となる場所が、江原道にあることを知りました。韓国マニアの私としては、ぜひとも訪れなければならないと思い、その場所へ向かうことにしました。

●韓国の「おへそ」へ
韓国の「おへそ」は、江原道・楊口(ヤング)郡に位置します。楊口郡は人口が約2万4千人弱(2017年3月現在)で、江原道のなかでも最も人口が少ない地域。楊口郡は「38度線」をまたぐように位置しており、軍人たちも多く駐在しています。

東ソウルバスターミナルを出発し、市外バスは洪川(ホンチョン)ターミナルを経由。冬はワカサギ釣りで有名な昭陽(ソヤン)湖を通り、バスは38度線を越えていきます。途中、山道をくねくねと走り、約2時間半かかり楊口ターミナル到着。(バスの経路により、1時間50分~2時間30分所要)


[バスターミナル近くの楊口の中心街]

季節は11月の初旬、イチョウの葉が色づいて落ち始めた季節。ひんやりとして肌寒さを感じるなか、楊口バスターミナル前で、郡内を走る農漁村バスを待ちます。バスは1時間に1~2本程度。(バスはターミナルから約20分弱、「桃村小学校、도촌초교」で下車。)

●正中央入口へ
バスを降りたあたりは、「桃村里(トチョンリ、도촌리)」とよばれる場所で、別名「おへそ村(ペコプマウル、배꼽마을)」とも呼ばれています。この場所から、舗装された緩やかな上り坂を歩いていくのです。

「おへそ」の地点は、「正中央(정중앙)」とよばれますが、その入口を示すゲートからは1キロ強、約15分ほど歩くと、国土正中央天文台にたどり着きます。


[国土正中央天文台]

国土正中央天文台には、天体に関する展示や、プラネタリウムのような上映室があるのですが、何よりも今回の目的は「おへそ」の地点を踏破すること!

ちなみに天文台の前には、中央を表すようなオブジェがあったので、「ここが中央地点?」と一瞬思ったのですが、どうやら違うようです。

天文台の職員の方に尋ねてみると、「ここから15分くらい登ったところにあります」と教えてくださったので、早々と天文台を出て、上に上がっていくことにしました。

韓国の全国各地を訪れたなかでも、「特別な地点」を訪れるのは「緊張感」というのか、妙に心が躍るもの。韓国の方でも、このようなところを訪れて、興奮するのはきっと物好きな方ではないか、と思うのです。

「まさに今、朝鮮半島の中心を訪れようとしている!」。そんな気持ちで、整備された山道を歩いていきます。「国土正中央地点 700m」という表示から、少し歩くごとに「500m」「350m」「50m」と、カウントダウンのように距離が減っていくのです!

●半島の中心で愛を叫ぶ!?
そして、ついに国土正中央地点に到着!まさにここが朝鮮半島の中心(!?)この場所に何があるか!?というと、大きなオブジェが立っています。単に人間が決めた中央なのですから、それ以上の特別なものがあるわけではありません。


[国土正中央地点のオブジェ]

ただひとつ気になるものが横にはありました。こんな山奥にボックスが!

ここには「国土正中央の気体験および、訪問認証センター」と書かれています。証明写真やプリクラのように、記念写真を撮り、しばらくすると印刷されて出てきます!


[正中央地点の自動写真機]

何があるわけでもない山奥の場所なのですが、「今、朝鮮半島のど真ん中にいるんだ!」という不思議な感覚。そのことを考えれば考えるほど、立ち去るのがもったいなく感じてしまうのです。これが「国土正中央の気」の正体なのでしょうか。


[半島の中心では口を開けただけで「愛」は叫ばなかった]

2014年当時、流行していた自撮り棒を使って、嬉々とした気持ちで記念写真を撮ったのですが、あることに気づきました!ここは朝鮮半島の中央ではなく、北朝鮮を含めた「韓国の全領土の中央だ」、ということ。

国土正中央の基準点となる北端、西端は、それぞれ北朝鮮の咸鏡北道、平安北道に位置しています。南端は、済州島の近くにある馬羅島(マラド)。そして東端は、独島(日本名:竹島)なのです。(※ちなみに大韓民国統治下の西端は、仁川広域市・白翎島、北端は江原道・高城郡です。)

●韓国マニアとしては踏破したいが、念のため。
韓国の隣国に暮らす日本人としては、この場所を政治的に考えると、なんとなく複雑な気持ちにならざるを得ないわけですが、そこで過去のエピソードを紹介することにしましょう。


[李舜臣将軍(全羅南道・麗水にて)]

かつて南部地方の旅をしたときの、タクシー運転手さんとの会話から。運転手さんが、この街の誇りとして、李舜臣将軍のことを語った際、わたしが「日本人としてはなんとなく複雑な気分だ」と答えたところ、「そんなことは言わないでください」と優しくたしなめられた記憶があります。

今回もその話と同じことだと思っています。このような場所を訪れて記念写真を撮ったことに、決して政治的な意味があるわけではありません。ひとりの韓国マニアとして、「韓国のおへそ」とよばれるマニアックな地点は、ぜひ踏破しておきたいものなのです。

●正中央地点から離れるのは、名残惜しい。
「まさに今、韓国の中央地点にいる」という状態から離れるときに、いくばくかの名残惜しさを感じながらも、バス乗り場へと30分かけて下山していきます。国土正中央地点に最も近い農漁村バスの乗り場の上には、望遠鏡で空を眺める月。

バス停に掲示されているのは、始点と終点の時刻表のみ。早歩きで少し汗ばんだ体に、初冬の冷たい風が当たって震えながらも、楊口バスターミナル行きのバスがやってくるのを、ひとり待つのでした。(完)



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トム・ハングル
吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。韓国旅行・地方旅の総合発信者。2012年に韓国文化誌『スッカラ』でデビュー、その後韓国旅行、語学Webの編集・ライターを経て、講座、トークイベントでの発信も。これまで韓国100市郡以上を踏破。平昌五輪開催の江原道公式ブログにも寄稿中。プロフィールお問い合わせ


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