馬山・古県のエボヤ(ミドドク)村へ
吉村剛史(トム・ハングル)
2011/03/16 改:2016/07/06
ミトドク(미더덕)という食材をご存知でしょうか?日本ではエボヤという名前で、ホヤの一種。トドク(ツルニンジンという山菜)に似ていることから付けられた名前です。
韓国ではヘムルタン(海鮮鍋)などにも使われている、一般的な食材だということなのですが、実は私もまだ食べたことがありません。馬山のミドドクは馬山五味の1つ。古県ミドドク村はその特産地として知られているそうです。
なぜここに行こうとしたのでしょうか?日本であまり食べられないものを食べたいのも理由のひとつですが、何よりも日本語の情報が少なすぎるのです。それなら自分が!
晩冬2月12日の午前、うっすらと曇りかかった空の下、地下鉄2号線沙上駅にある釜山西部バスターミナルを出発します。
洛東江の鉄橋を渡る車
韓国といえば、日本車はほとんど走っていないのが興味深いところ。写真の小型トラックは起亜(キア)ですが、そのほか現代(ヒョンデ)、バスには大宇(デウ)も多く見られます。馬山まではわずか40分ほど。なんと7分間隔で出発しています。乗客は10人強。一体、採算はとれるのでしょうか。
馬山・合城洞(ハプソンドン)にある市外バスターミナルに到着。まずは慶南大学校のあたりで友人と待ち合わせる予定があったため、その用事をすませてから、1人でミドドク村へ向かうことにしました。
時間はすでに14時。だいぶ日も傾いてきたこの時間。慶南大学校の交差点にあるバス停で78番バスを待とうとしていたのですが、電光掲示板にもなかなか表示されず…。本数が相当少ないようです。
「ミドドク村!?なんの目的で行くんですか?」
「ミドドクを買って、写真撮ってすぐに帰ってくることになりますよ」
タクシーの運転手さんは私にそう話します。しかし、ここまできたのに行けなければあとで後悔するだろう。2、30分で行けるというので、そのまま向かうことにしました。私が日本から来たというと、アントニオ猪木のことを話しかけてきます。
「7、80代は日本語が話せるんだけどね、それより下の世代だからなかなか難しくてね。」
タクシーは地方のバイパスのような、そんな道をハイスピードで駆け抜けていきます。100ウォン単位のメーターもかなりの速度で上がっていきます。金額が10,000ウォンを超えたとき、ちょっとした不安を覚え、尋ねてみるともうすぐ着くとのこと。バイパスから横道にそれ、海のほうへと向かっていきます。
「帰りはバスも少ないし、ここに来るタクシーはすぐ下ろすだけで帰っちゃうよ」
「10分なら待つけどどうします?」
といわれたものの、散策するにしてはあまりにも短すぎる。そう思ったため、断ることにしました。
入ってきた小道はミドドク路。村の入口には「古県訪問歓迎します」との横断幕が。運転手さんが言う「何もない」というのは本当なのだろうか?
でもミドドク村という別名があるくらいだから、なにか新しい発見はできるはずだ。でもすでに時間は15時前。夜には釜山での予定があります。それまでにちゃんと戻れるのでしょうか!?
ガイドブックにも書かれていない村。韓国語も十分できる、とまでは言えるほどではないのに、情報を掴んでこれるのでしょうか?13,500ウォンを運転手に手渡すとUターンして元の道を戻っていきます。こんなひとり旅の過程も面白いものです。
タクシーの運転手に「何もないよ」と言われて降りたミドドク村。小さな漁船がいくつも停泊しているだけの静かな小さな漁村です。土曜日15時をまわったこの村。商店すらもシャッターが閉まっています。
おじさんやおばさんたちが座っておしゃべりをし、カモメは水面に近い空を自由に飛び回っています。それ以外はほとんど無音かと思えるほど。無風で波も立っていません。そんな静かな村。観光客もいないようなこの場所でビーチチェアをおいて、1日ゆっくり過ごすなんてできたら良いかもしれない。
映画「海雲台」で、海沿いにパラソルを置いて、焼酎(ソジュ)を飲んでいるシーンがありましたが、そんなのもここでできたらなぁ、いろいろ想像してみます。実際には許可なくやったら怒られるかなぁ、何者がきたのか、って思うだろうなぁ・・・と考えながら。
せっかく来たのに誰とも話さないのでは楽しさも半減してしまいそう。なにかこの村のことが知りたくなって、歩いていたおばあさんに話しかけてみます。
奥で丸くなっている人々はカキを剥いています
外国から観光で来た、と言うと、そのおばあさんですら、なんということか、「何もないから写真だけ撮って帰ればいいよ」というのです。「ミドドクを売っているところはありますか?」と尋ねると、「お店も平日しか空いていないよ」という答え。
結局ミドドクも食べることができず、何しにいったのか、と思ったのですが、このような静かな田舎の漁村に訪れる機会もそんなにあるわけではない、日本でもあまり行かないだろう、と考えると行って良かったと思います。
「さて、どうやって帰ろうか?」
到着して15分のとき、空車のタクシーが後ろからやってきます。けれどももう少しここでゆっくりしたい…と思ったため見送ります。
すると今度はタクシーが全く来ません。しだいに不安は増すばかり…18時にはプサンに戻らなければなりません。馬山駅行きの78番バスも17時10分まで来ません。
バス停ではおばさんたち3人ほどが、もう1つの74-1番バスを待っています。
始発は古県(コヒョン)ではなく、ここから2つ離れたソンドゥ(선두)という停留所が折り返しになっているようです。バスが見えたときに「馬山駅方面に行きたいのですが」と、おばさんに尋ねてみると「とりあえず乗れ」とのこと。
けれども「私が降りるところで一緒に降りよう」と言われた以外は、全く韓国語が理解できなかったために、少し焦りました。5分ほど乗ると鎮東(チンドン)換乗場に到着します。そこから馬山駅方面のバスに乗換え。
74-1番というのは乗り換えターミナルまで行くバスなんだ!とそこでやっと気づき、おばさんについて行きます。私は慶南大学校の前にある南部バスターミナルから、釜山に戻ることにしたため、「コマプスムニダ」とお礼を言い降りました。また旅先でちょっとした親切を受けました。
日本語の馬山・古県ミドドク村旅行記は、インターネットでは私が第1号だろうと思っているのですが、収穫はあまり多くありません。必ず近いうちにもう一度訪れ、ミドドクを味わってみたい。そして再び旅行記を書いてみたいと思います。そしてミドドク村へ行かれた方はぜひご一報くださいね!
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★アクセス
1.馬山駅から78番バス(1時間程度、1日6本)
行き:馬山駅出発時刻
07:00,10:00,12:55,16:00,18:55,22:05
帰り:ソンドゥ出発時刻表(古県から2つ離れたバス停。時刻はほぼ同じ)
05:20,08:00,11:10,14:05,17:10,20:05,22:55
2.鎮東(チンドン)換乗場経由→74-1番バスに乗り換え
乗り換え後10分弱。1日に8本運行。
(2011年2月12日現在)
→時刻表の写真
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吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール