演劇の街・大学路(テハンノ)~ミュージカルにカフェにと素敵なひとときを
吉村剛史(トム・ハングル)
2019/12/19 改:2019/12/20
大学路(대학로、テハンノ)といえば、ミュージカルが行われる小劇場がひしめき合い、そこにカフェがあり、日々にぎわっています。公園ではストリートパフォーマンスが行われたりもするなど、芸術の街ともいえます。
この町が「大学路(대학노・テハンノ)」と言われているのはなぜでしょうか?文字通り、大学があることに由来します。その大学とはどこの大学のことを指すでしょうか?
それは韓国の最高峰ともいえる国立大学、ソウル大学校(서울대학교・ソウルテハッキョ)です。ソウル大学校の蓮建キャンパスがこの場所に位置しています。
とはいっても現在、ここにあるのは医系の学部のみ。建物の裏手にはソウル大学病院が併設されています。かつてはこの大学路に文理のキャンパスがあったのですが、1974年に現在の場所(冠岳区)に移転しました。
また大学路の近くには朝鮮時代の最高教育機関である「成均館(성균관・ソンギュングァン)」を前身とする成均館大学校があり、ここもまた名門大学として知られています。
大学路の地図・アクセスを見てみよう
大学路ヘはどのように行けばよいでしょうか?大学路の最寄り駅は、地下鉄4号線の惠化(혜화、ヘファ)駅です。東大門駅からは北に一駅行ったところに位置します。
そのため東大門あたり、とくに広蔵市場(광장시장、クァンジャンシジャン)あたりからは徒歩15分ほどでいける場所です。
[大学路の地図]
マロニエ公園がある惠化駅の東側ですが、こちらには小劇場が数多く集まっており、そこにカフェや飲食店がひしめきあっています。大学路を訪れる目当てとしては主にこちら側になるでしょう。
そして駅の西側には「大明コリ(대명거리、デミョンゴリ)」という繁華街があります。ここは朝鮮時代からの歴史ある通りなのですが、特にそういった雰囲気は感じられず、若者たちでにぎわう学生街です。
[大明通り]
そこから北西方向に進んでいくと、成均館大学校があるため、このあたりが実質的に成均館大学の学生街といえるのではないでしょうか。若者の街の雰囲気を感じ取りたい方は、ぜひ歩いてみてください。
繁華街には小劇場がひしめき合う~ミュージカルや文化の聖地
大学路を訪れるお目当てといえば、韓国ミュージカルではないでしょうか。日本では演劇やミュージカルといっても敷居が高い印象がありますが、韓国ではわりとふらっと見に行ける雰囲気です。
惠化駅の出口から地上へ上がっていくと、このようにミュージカルのポスターが競うように貼られており、さてどれを見ようかと考えてしまいます。それもそのはず、大学路の小劇場は100以上あるといわれており、そこで連日、演劇や芝居などが行われているのです。
街を歩くとたくさんの小劇場が目に入ってくるとともに、チケットボックスがあちらこちらに存在しています。このような場所で券を買い、気になった公演へと、ふらっと入ってみるのも楽しいかもしれません。
そして有名なミュージカルは専用劇場を持っており、そこで公演が行われます。キャストが変わりつつ、ロングラン公演を続けているのです。
大学路でミュージカル鑑賞!どの公演がよい?
さてお目当ての公演を見つける方法について触れておきましょう。当然ではありますが、ミュージカルは韓国語で行われます。さらに韓国語も通常より早口とも思えるものも多いため、理解するにはそれ相応の語学力が必要になります。
そのため一般の観光客としてはノンバーバル(非言語)・パフォーマンスや、外国語字幕付きの公演を狙うとよいでしょう。これにより、リアルタイムに笑ったりと、会場の熱気とともに共感できるはずです。
現地に行って公演を調べる場合は、後述のマロニエ公園そばにある「良い公演案内センター(좋은 공연 안내센터、チョウンコンヨンアンネセント)」に立ち寄ってみましょう。ここで当日券を発券することもできます。
料金は一般30,000ウォン~(約3,000円)。有名な公演は50,000ウォン前後(約5,000円)ですが、購入するサイトによって安く手に入ったり、そのほか学生割引だけでなく、会社員割引などの割引制度が充実しており、現地の人たちも気軽に公演を見に行きます。
観光客としてはチケットの半券で割引になったりする制度を活用するとよいでしょう。チケット売り場や案内所にて確認してください。ロングラン公演のミュージカルで、外国語字幕がついている公演は韓国ミュージカルのビギナーの方にも安心です。
前売りチケットはINTERPARKというサイトが最も有名です。こちらは日本語・クレジットカードで購入できるので安心。有名な公演に関しては他の予約サイトから申し込むほうが安く買える場合があります(日本円で2000~3000円と安価)。
以下で紹介するものは、日本でも公演されたことがあるもの。本場のミュージカルの熱気を大学路で味わってみてはいかがでしょうか。
●パルレ(빨래)
パルレ(빨래)は「洗濯」という名のミュージカル。モンゴルからやってきた青年ソロンゴと、韓国の地方からソウルへやってきた27歳のナヨンとの物語で、2005年から上演されている人気作。
パルレは日本でも公演が行われたことがあり、ソロンゴ役で日本公演に出演した俳優の野島直人氏は、韓国でも出演しました。
チケット購入:INTERPARK
そして「パルレ」にハマり、韓国語学習本を作ってしまった方もいます。CD付きの本なので、こちらは事前学習としても使えます。「ミュージカル「パルレ」を歌って日常韓国語を学ぼう」(Amazon)
●キム・ジョンウク探し(김종욱 찾기、あなたの初恋探します)
キム・ジョンウク探しは、「キム・ジョンウク」という初恋の相手を、女主人公が名前だけを手掛かりにして、「初恋探し株式会社」の男とともに探す3人のロマンチックコメディー。こちらは2006年からのロングラン公演。
キム・ジョンウク探しもまた、日本で上映されたことがある作品です。チケット予約:キム・ジョンウク探し
●愛は雨に乗って(사랑은 비를 타고、サ・ビ・タ ~雨が運んだ愛~)
「愛は雨に乗って」は、家族愛を描いたミュージカル作品で1995年からのロングラン。3人の俳優たちが繰り広げます。邦題の「サ・ビ・タ」は韓国語タイトルの頭文字です。
チケット予約:愛は雨に乗って
●NANTA(ナンタ)
韓国のノンバーバル・パフォーマンスとして最も有名な公演がこれです。ただしNANTAに関しては大学路での公演は限定的なので、明洞・弘大など他の場所のほうが鑑賞しやすいでしょう。NANTA明洞・弘大公演
こういった作品を入口にして、韓国のミュージカルを楽しんでみてはいかがでしょうか?なかには韓国ミュージカルの虜になり、日本から大学路へと何度も通うリピーターもいるほどです。
大学路のランドマークとなるマロニエ公園、そして大劇場
大学路のランドマークとなる場所があります。その名も「マロニエ公園(마로니에공원、マロニエコンウォン)」。ソウル大学が移転したあとに整備された公園です。
この公園ではストリートパフォーマンスが行われるなど、アーティスティックな若者たちが集う場所になっています。公園内には野外公演場が設けられていたりもします。2012年に再整備の工事が行われ、現在のような姿になりました。
公園のすぐ脇には「アルコ芸術劇場」があります。こちらは1981年に開業。小劇場がひしめき合う大学路のなかでも、600席ほどの大劇場があるホールです。それとともに以前は「東崇アートセンター」という代表的な劇場がありましたが、こちらは閉館しています。
[アルコ芸術劇場]
アルコ芸術劇場と並ぶ存在なのが「大学路芸術劇場」。こちらは500席規模の劇場がある公演場で、2009年に開館した比較的新しい劇場です。大学路の劇場街にある大きな建物なので、わりとすぐにわかる場所にあります。
[大学路芸術劇場]
大学路のグルメ・カフェ
さてミュージカル公演を楽しむのもよいですが、その待ち時間や鑑賞後には、この周辺でグルメを楽しんだり、カフェでお茶をしたりしながら時間を過ごすのも良いのではないでしょうか。
小劇場街にはカフェなどの飲食店がひしめきあっており、オシャレな外観のカフェは居心地がよさそうな雰囲気。気になったお店に入ってみましょう。
先ほどにも挙げた、惠化駅の西側にあたる「大明コリ」は若者の繁華街。そこにも様々なお店があるのですが、ここでは小劇場街を中心にお店をご紹介したいと思います。
パンジョ
パンジョ(반저)はオリジナリティあふれる人気の居酒屋。「インスタ映え」という言葉が生まれる前から、SNS映えするようなメニューが多いこのお店。
カボチャの海鮮蒸しなど、カボチャをまるごと使ったメニューや、スイカやメロンのような果物を丸ごとくりぬいたフルーツ焼酎は人気。
絵画が飾られたアーティスティックな店内も芸術の町である大学路らしい佇まい。グループや大人数で訪れるのに適しているので、友人たちとミュージカル鑑賞をするときに訪れてみてはいかがでしょうか。
パンジョ(반저)
営業時間:11:30~深夜2:00
ソウル市鍾路区大学路8街ギル56
NAVER PLACE
スンデ実録
スンデ実録(순대실록、スンデシルロッ)は、豚の腸詰であるスンデの専門店。数々のテレビ番組にも登場したことがあるお店なのですが、異色の「スンデステーキ」なるものがあることでも知られています。
基本となるメニューのスンデクッ(순대국)は8,000ウォン。弾力のある皮に中身がぴちっと詰め込まれたスンデは臭みも少なく、肉厚でジューシーな味わい。
スンデの食堂にしては、店内もなかなかスタイリッシュな感じで、女性にも入りやすい印象を受けます。近所の人が外のテラスで軽くコーヒーを飲んでいくような、気軽さが感じられるお店です。
このお店ではお水は500mlペットボトルで出てきます。24時間営業で、ここならひとりでも食事ができます。
スンデ実録
営業時間:24時間
ソウル市東崇ギル127
NAVER PLACE
大学路を訪れたら周辺散策も~駱山公園・梨花洞路上美術館
そして食後には周辺の散策もしてみましょう。大学路は小劇場街をただ歩くだけではもったいない場所。小劇場街の裏手、大学路エリアの東側には駱山(낙산・ナクサン)という山、とはいっても丘のような場所で公園になっています。
この駱山公園にはソウルを囲む城郭があり、とても見晴らしがよく、ドラマのロケにも使われたりします。夜に訪れると夜景がとても綺麗。穴場的なスポットです。
城郭をずっと辿って見てみると東大門の繁華街まで続いており、ファッションビルを望みます。
梨花洞路上美術館
日が暮れる前には、駱山の麓にある梨花洞路上美術館のあたりにも足を運んでみましょう。この場所は斜面に位置しており、「タルトンネ(月の街)」といわれる貧民街のような場所でした。
2006年の文化体育観光部(日本の文科省にあたる)による事業で街に壁画やアートが施され、観光客も訪れる人気スポットになりました。
当初は階段に壁画が描かれ、民家ばかりの場所でしたが、最近では商業化が進んでカフェが増えてきたように思います。羽の壁画の前でポーズをとって写真を撮ったりと楽しめる場所。
しかしこの場所は住宅街。観光客が押し寄せたことにより、住民たちは迷惑しているようです。実際に午後6時を過ぎると住民たちは観光客を追い出すように声をかけ始めます。
この場所を訪れて散策を楽しむのは良いですが、住民たちがいる街だということを忘れないようにしましょう。
若者たちでにぎわう演劇とアートの街、大学路を楽しもう
芸術とアートの街、大学路(テハンノ)。ソウル大学校の本部がある学生街でしたが、移転から半世紀近くが経過した今もなお、学生街のように若者たちでにぎわっています。
小劇場が多く、演劇やミュージカルに精を出す若者たちが集うなどエネルギーの感じられる町。ミュージカル鑑賞とともに街の散策を楽しんでみてください。
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吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。ライター、他。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上・江原道全18市郡を踏破するなど、自分の目で見聞きした話を中心に韓国関連情報を伝えている。2021年1月にパブリブより初の書籍『ソウル25区=東京23区』を出版。2022年に韓国語能力試験(TOPIK)6級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得。 ※韓国に関する記事制作やその他のご依頼もご相談ください。お問い合わせ 筆者プロフィール