「ヨルム冷麺」って夏冷麺じゃないの!?
 2014/07/10 改:2016/08/02 吉村剛史(トム・ハングル)

冷麺は「冬の食べもの」といわれます。韓国で1849年に記されたといわれる『東国歳時記』では、旧暦11月の食べものとされているためです。

けれども現代の韓国では夏の食べものとして認識されています。その中でも夏にこそ旬の冷麺があります。それが「ヨルム冷麺」です。

ヨルム冷麺とは!?

ヨルム(열무)とは辞書をひくと「若大根、幼い大根」と書かれていますが、ヨルム冷麺というと、大根の間引き菜が入った冷麺です。間引きとは作物に養分や日の光がしっかりといきわたるように、まわりの小さいものなどを引っこ抜いてしまうこと。

その間引き菜を入れた冷麺がヨルム冷麺。青々とみずみずしい大根の葉がおいしい麺料理です。(日本語で書くと混同するのですが、「夏」のハングル表記は여름(ヨルム)です。)

ヨルム冷麺を出す食堂がそれほど多いわけではなく、街の食堂で冷麺を注文すると大根の葉のキムチが入っていたり、冷麺ではなくともつきだしのおかずのなかにヨルムギムチが出てきたりします。なんども韓国旅行をされている方は、きっとどこかで見たことがあるはずです。

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新宿区・南陽屋(閉店)のヨルム冷麺

私が韓国に住む前の2011年の夏のこと、イベントプロデューサーで元・韓国日報記者の佐野良一先生に誘われ、新宿の南陽屋という江原道(カンウォンド)料理のお店に行きました。佐野先生は「華麗なる朝鮮王朝」など最近では歴史の本を執筆されています。


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そこで食べたのがヨルム冷麺。ここではトンチミ(大根を塩漬けして発酵させた汁)のスープに麺を入れた冷麺です。佐野先生が食べたい、というリクエストでお店のメニューになったそうです。

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南陽屋の店長・久美子さんは江原道の横城(フェンソン)のご出身。寒い地方だからか塩気が強めの味付けをしますが、見た目も白く濁りとってもさっぱり。

若大根の葉はスープに入ってしんなりしているとはいえ、元気があります。これを食べると気持ちもシャキッとするのです!私はヨルム冷麺にハマり、留学までのわずか2か月間お店に通い詰め、両手の数ほど食べました。

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そんな南陽屋は、私がソウルにいるあいだ道路拡張工事で立ち退きにあい、残念ながら閉店してしまいました。ですが先日(2014年7月)、佐野師匠のお声かけで新大久保の韓国料理店「おざくきょ」をお借りし、ヨルム冷麺を食べる会が開かれました。

なんと一日限定で復活したのです!3年ぶりに食べた南陽屋のヨルム冷麺でした。

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味のお話は上に書いた通りですが、「このスープにご飯を入れるとおいしい」という佐野先生のお言葉で、ご飯にスープをかけ、この上からごま油をひとふり。スープに浸したこのご飯を「マリパプ(말이밥)」といいます。

「マリ」は動詞「マルダ(말다)」で「(ご飯や麺を)スープに浸す」という意味。これまた一味違った味を楽しめるのです。

韓国旅行でヨルム冷麺を食べたい!

「韓国で食べられるの?」「韓国旅行中に食べてみたいのだけれど・・・」という声も聞かれそうですが、私はこの南陽屋タイプのヨルム冷麺は、一度も見たことがないのです。そこで今回は私が韓国で食べたことのあるヨルム冷麺を紹介します。

仁川・花平洞で
まずは仁川・花平洞(ファピョンドン)にある、洗面器ほどのの大きな器で出てくる冷麺。いわゆる「洗面器冷麺(セスッテヤネンミョン、세숫대야냉면)」。ここで食べた冷麺にはヨルムを使ったキムチ、ヨルムギムチがのっていました。

唐辛子を使った、ほどよいピリ辛さのキムチをのせて食べます。詳しくは「仁川・花平洞冷麺通り「洗面器冷麺」」の記事で!

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ここの冷麺はびっくりサイズで見ごたえあり、食べ応えありです。半分に切ったスイカを切り抜いて、そこに冷麺を入れたスイカ冷麺を出すお店もあるので、仁川を訪れた際には立ち寄ってみてください。

慶尚南道・晋州で
そして唐辛子を使っていないヨルム冷麺、「韓国では見たことがない」と思っていたのですが、実は私は一度食べたことがありました。

慶尚南道・晋州(チンジュ)で有名な冷麺のお店。晋州市七岩洞の「トゥンボヨルムネンミョン(뚱보열무냉면)」というお店なのですが、海産物のダシをとって出した晋州冷麺とは異なります。

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スープの味までは記録がないのですが、このお店は元々コムタンの店だったそうですから、おそらく牛肉のダシでとったスープにヨルムを入れたもの、だと思います。夏に食べてとても爽やかで美味しかったことが私の記録にも残っています。

ヨルムグクスもさっぱり夏の味!
ヨルム冷麺ももちろんのこと、ヨルムグクスという食べ方もあります。それは昨日の記事で紹介した「キムチマリグクス」にして食べるということなのです。

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ヨルムギムチのスープに麺を投入してあげれば、簡単にヨルムグクスに変身です!こちらは細い素麺の味に、スープが軽くからまり、のど越しよくさらっと食べられるのでおすすめです。

ヨルム冷麺をぜひ一度、どこかでお試しあれ!

トム・ハングルの韓国旅行ひとこと

若大根の葉の入った、みずみずしくてシャキシャキしたヨルム冷麺。もう一度申し上げますが、この「ヨルム」とは「夏」のことではなく、若大根(열무)の大根の間引き菜を使った冷麺のこと。

ソウルの老舗冷麺店ではあまり見たことがありませんが、一般の食堂の夏メニューで登場したりします。私は、韓国のどこかの軽食堂で、冬にダメ元でヨルム冷麺を注文してみました。そうしたら「夏限定だよ!」と断られました(泣)

記事中で紹介したところはもちろん、時々ソウルの食堂にありますので、ぜひチャンスがあれば召し上がってみてください。



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トム・ハングル(吉村剛史)
吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。31歳。2012年に韓国文化誌『スッカラ』でデビュー、その後韓国旅行、語学Webの編集・ライターを経て、文化センター講座、トークイベントでの発信も。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上を踏破するなど、地方にも関心が高い。平昌五輪開催の江原道公式ブログにも寄稿中。プロフィールお問い合わせ


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