晋州(チンジュ)で韓国人と遊ぶ~晋州ビビンバと晋州城
 2011/09/14 改:2016/10/04 吉村剛史(トム・ハングル)

7月のとある朝、製鉄所で有名な東海岸の浦項(ポハン)にいた。
この日の目的地は慶尚南道の晋州(チンジュ)である。大移動の始まりだ。
直線距離で約150キロも離れている。

浦項からのルートだと釜山に一度戻り、
それからバスを乗り換えていくというルートを想定していたのだが、
たまたま通りかかった高速バスターミナルで馬山(マサン)行きがあるとわかった。

馬山―晋州間のバスはあるので、これなら馬山で乗り換えればいい。
早速朝6時50分のバスに乗り、まずは馬山へ向かう。
バスは3列シートのリクライニングでテレビもついている。

旅の疲れもあり、寝ていたいと思いつつも一睡もできず、
存分に夏の朝の日差しを浴びながら2時間ほどで馬山高速バスターミナルに到着した。
ここから市内バスで馬山南部市外ターミナルへ移動し、市外バスに乗り継いだのである。

DSCF3268.jpg

DSCF3271.jpg

青々とした水田、緑豊かな山里の風景を
冷房の効いたバスの中で窓越しに眺めながらの約1時間20分であった。
晋州市内を流れる川、南江(ナンガン)にかかる晋州橋を渡るとバスは到着である。

去年7月にも訪れた晋州、また来るなんて想像もしていなかった。
去年の秋ごろに仲良くなった韓国の友人が住んでいるのでまた来てしまったのだ。
わざわざバスターミナルの前で待っていてくれた。

「よく来たね~」と。本当に我ながらによく来たものだと思う。
釜山のターミナルからは1時間30分の日帰り圏内なのだが、
東海岸の浦項からはるばるやってきたのだ。もう12時をまわり、お昼の時間だ。

私の友人とその友人である2人も合流して、
念願だった晋州ビビンパを4人で食べに行くことになった。

晋州ビビンパは朝鮮時代、全州ビビンパ(全羅北道)、
海州ビビンパ(現・北朝鮮)とともに3大ピビンパとされている。
昨年はそんなこともよく知らずに晋州に来たので「今回こそは!」と思っていたのだ。

DSCF3276.jpg

連れて行ってもらったのは晋州の中央市場内にある
「第一食堂(チェイルシクタン)」というお店。
油断すると通り過ぎてしまいそうな小さな食堂だが老舗の雰囲気も感じられる。

DSCF3285.jpg

2階に案内され、さっそく注文した。
しばらくして出てきたのはユッケビビンパである。
ユッケがのせられているのが晋州ビビンパの特徴だ。

晋州ビビンパの歴史は文禄の役(壬辰倭乱)での晋州城攻防戦にまでさかのぼる。
戦争中、軍人たちが手早く食事を済ますためにご飯の上にナムルをのせたのだが、
スタミナをつけるためにユッケも入れて混ぜたのが始まりだという。

緑豆モヤシ、ワラビなどの五種類ナムル、
一番上にはごま油の風味のユッケがのせられ、
そして牛肉と乾燥タコ、貝などを煮込んだスープが少しかかっている。

DSCF3280.jpg

見た目が華やかなことから「七宝花飯(チルポファバン)」とも呼ばれているのだが
ビビンパはかき混ぜてから食べる料理とはわかっていながらも崩すのはなんとなくもったいない。
お店の方が「かき混ぜ方によって味が変わる」といいながら混ぜてくれた。

残念なことにあっという間に形が崩れてしまうのだが、
ご飯やナムルにユッケがしっかりと絡まりあう。
スッカラでご飯を口に入れるとごま油の風味が広がる。

そして付け合せのスープはソンジ(牛の血を固めたもの)や
コリコリとした歯ごたえのある牛の内臓が入っているネジャングクである。
あっさりとしたビビンパにはよく合ったスープだと思う。

朝鮮3大ビビンパである晋州のユッケピビンパ。
釜山に行くついでに足をのばして本場の味をぜひ一度お試しあれ!(続)

参考資料:八田靖史・著/佐野良一・監修『魅力探求!韓国料理』(2006年 小学館)
한국관광공사 『대한민국 대표 음식 이야기』(넥서스BOOKS 2009年)
晋州市観光パンフレット『晋州観光』

晋州ビビンパを食べたあとは4人で映画を見に行くことになった。
韓国では少し時間ができると、その場の思いつきで映画を見に行くことが多い。
値段は日本の半額ほどの8000ウォン。安いこともその理由だろう。

DSCF3287.jpg

旅行で来ただけなのに、韓国のスタイルにとけ込んでいるような気になった。
見に行った映画は「サニー」。7月時点でなんと観客数700万人を達成したという。
25年前の女子高生7人組とその現在を描いた映画だ。

映画館を出ると17時になった。食事をしにいくのはまだ少し早い。
コンビニで買ったアイスをくわえながら晋州城へ向かう。
1000ウォンの入場料を払い、昨年と同じく栱北門から入った。

天気はとても良く暑いことは暑いのだが、今思うとわりと爽やかな気候だった。
スチーム風呂のようなむわーっとした暑さの東京にいるとそれが際立ってわかる。

晋州城は日本でいう豊臣秀吉による朝鮮出兵での戦いの舞台である。
20世紀前半の植民地時代もあわせて、日本に対し遺恨を残す結果となる出来事である。
そんなことを考えながら400年以上が過ぎた今、この地を韓国人と歩いている。

DSCF3292.jpg
(金時敏将軍像)

やっぱり気になるのが日本に対してどう思っているのか、である。
尋ねてみると「もう昔のことだからあまり気にしてはいない」と1人はいうのだが、
もう1人はそれを聞くと納得できない表情を見せる。

一緒にいた3人ともに日本に住んだ経験があるが、やはり歴史観もいろいろだ。
ただ日本が嫌いか好きか、という一言では片付けられない。

DSCF3293.jpg

DSCF3295.jpg

夕暮れ時がせまる青空のもとをゆったりと流れる南江を眺めると気分が落ち着く。
巡視と書かれたのぼりが心地よい風になびく。
朝鮮三大楼閣の1つである矗石楼に上がりみんなで寝そべったがこれも気持ちがいい。

そしてこの晋州城のなかで見ておきたかった岩がある。
酒を飲み酔った日本の武将を妓生(キーセン)である論介(ノンゲ)が抱きかかえ
飛び込んだという逸話が残っている。そのためこの岩を義岩(ウィアン)と呼ぶ。

DSCF3302.jpg

川へ降りてみるとぽっこりと大きな岩が川から顔を出している。
「いっしょに飛び降りる?」と女友達に真顔で冗談をいわれて驚いたが、
この川はいったいどのくらいの深さがあるのだろうか。

さて、時間も6時をまわったので食事に行くことになった。
友人のアルバイト先に置かせていただいた荷物をとりに晋州の中心街に戻った。
そのとき見かけたのが屋台に群がる女子高生を中心とする人々の姿だ。

DSCF3310.jpg

キンパプ、ティギム、トッポッキやスンデを売っている。
小腹がすいたときにちょっと立ち寄って食べられるのは屋台のいいところだ。
日本ではあまり見ることがないので韓国らしさを感じられる一面だ。(続)

冷麺を食べた後はお酒を飲みに行くことになった。
どこに行こうかと、地元に住む3人が話し合い、
そのうち1人が通う国立慶尚大学校(以下、慶尚大)の周辺に行くことになった。

タクシーを拾うと、車は南江沿いの一本道を勢い良く走り出す。
ほんの5分ほどの距離だっただろうか、慶尚大の入口に着いた。

この時点でもう20時。だいぶ暗くなってはきたがまだ空の明るさが残っている。
テニスコートで運動する学生たちを横目に見ながら閑静なキャンパスのなかを歩いていく。

DSCF3338.jpg

この大学に通う彼女が大学のことをいろいろ説明してくれたのだが、
慶尚大は馬山にある慶南大学校(私立)と校名の問題で争っていたという話を聞いた。
慶尚南道を代表する大学として慶南国立大へと変更を試みるのだが認められなかったのだ。

DSCF3341.jpg

そして山なりのアーチが3つある特徴的な正門から大学の外に出ると、
道路をはさんだその向かいにはいくつものお店の看板が煌々と光る学生街がある。
韓国にあるチェーン店を全て集めてきたように見慣れた看板だらけである。

HOLLYS COFFEE,STAR BUCKS COFFEE,Family Mart
PALIS BAGUETTE,baskin robbins,Mr.PIZZA….

DSCF3342.jpg

しかし、そんな場所でも建物の密集した都会の学生街とは違った開放的な気持ちになれる。
慶尚大は韓国の大学のなかでも敷地面積では上位になるほど広々とした平坦なキャンパスで、
さらに片側4車線の道路を気持ちよく車が走り抜けている。

焼酎(ソジュ)のアルコール度数に体が疲て果ててしまった私は、
「マッコルリが飲みたい」と伝えるとマッコルリのお店は1つしかないといい
そのお店に連れて行ってくれた。

DSCF3347.jpg

DSCF3348.jpg

お店のなかはやはり学生街の居酒屋という雰囲気だ。
夏休み中なのでそれほど人は多くないのだが私と同年代か少し下くらいの客層だ。
お酒はマッコルリ2:サイダー1で割ったイトンイルバン(2통1반)を注文した。

DSCF3349.jpg

落書きでいっぱいのテーブルにところどころ凹んだやかんが置かれる。
おつまみはヘムルパジョン、箸で食べやすい大きさにちぎった。
薄いが生地に弾力が感じられるパジョンだ。

DSCF3351.jpg

DSCF3353.jpg

乾杯をして話をしだすのだが、お店のテレビのニュースのことで話題は持ちきりだ。
7月の上旬のこの日は、軍隊でいじめを受けた軍人が発砲し、
4人を殺傷した事件が起きた日であった。

軍隊を出た男たちはみな「いい経験だった」といい、
「楽しかった」と言う人もいるが、「もう二度と行きたくない」というのは誰もが言う。
そして日本は徴兵制がないから良いなぁ、と。

そして2本目もイトンイルバン(2통1반)を注文する。
サイダーが入っているからといって極端に甘く感じることもない。
炭酸のせいなのかとても爽やかな飲み口なのである。

ようやく私もほろ酔い気分になってきた、
スナック菓子をおつまみにしながらいろいろとおしゃべりをしていた。
9時を過ぎ、お店を出ると次はカラオケに行こうという。

私自身、韓国では初のカラオケだ。
韓国のカラオケは日本のように「あと10分です」という電話はかかってこないが、
その代わりに残り時間表示のシステムがあり、さらには時間のボーナスもあるのだ。

DSCF3357.jpg

今回は1時間の設定だったので「59」の表示からスタートし、
1分ごとに数字が減っていく。しかし、突然数字が「10」増えたりもするのだ。
お店が混雑していないときにはボーナスを何度も何度もつけてくれる。

1時間といえども結局は、倍くらいの時間を歌い続けられることもあるというわけだ。
時間を「ボーナス」させるというシステムは、盛り上がりに拍車がかかる。
しかし、これを苦痛だと思うカラオケ嫌いは必ずいるに違いない。

DSCF3362.jpg

ルームにはタンバリンも置かれている上に、照明にも凝っている。
キラキラとした星屑のような光が部屋中に舞い散る。
日韓の曲をいろいろと熱唱し、2時間近くにわたり楽しい時間を過ごした。

そして「また晋州に行くから」と言い、別れを告げる。
私が住みたい町である晋州。次に行く時もさらなる発見があるだろうか。(終)



  • 記事が役に立ったらシェア!
Twitter,インスタグラムで韓国旅行の情報をゲット!
Twitter @tomhangeul
Instagram @tomhangeul
トム・ハングル(吉村剛史)
吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。2012年に韓国文化誌『スッカラ』でデビュー、その後韓国旅行、語学Webの編集・ライターを経て、文化センター講座、トークイベントでの発信も。1年8ヵ月のソウル滞在経験のほか、韓国100市郡以上を踏破。海外の常識をレポートする『海外ZINE』の韓国担当ライター、平昌オリンピック開催地の『江原道公式ブログ』にも連続寄稿中。プロフィール・お問い合わせ


このページの先頭へ