ひとり旅同士の出会い~全州(チョンジュ)のさんぽ旅
 2011/01/30 改:2016/07/06 吉村剛史(トム・ハングル)

2010年3月14日、友人の実家のある全羅北道・高敞(コチャン)を出発し、全州へ。ピビンパの本場、全州ビビンパを味わうためでした。高敞から全州までは直線距離で60キロほど。市外バスを利用すれば、約1時間強でたどり着きます。

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全州バスターミナル

全州に到着したのは13時すぎ。天候は高敞を出発したときと変わらずどんよりとした曇り空。3月とはいえ、気温は東京の真冬並みかそれ以下。

しかしオンドルで温まってから出発するせいなのか、旅行で気分が高まっているせいなのか、もちろん真冬の格好ではありますが、そこまで寒くは感じないのです。

さて、目当てのピビンパはどこで食べようか。
ガイドブックについている地図は小さくてよくわからない、ましてや地方都市。情報はそれほど多くはありません。

「まずは観光案内所で地図をもらおう!」

バスターミナル周辺を歩き回っていると案内所が見つかります。そこに置いてあった日本語版のパンフレットをもらっていきました。

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私が行ったときに尋ねていたのは、私と年が同じくらいの若い女性でした。しかも、聞こえてくるのは日本語。

なんとなくひとり旅の寂しさがあるなかで、その方も1人でいたため、なんとなく親近感がわいてきたのです。ちょっとドキドキしながらも、声をかけてみることにしました。

話してみると私と同い年。石川県出身だとのこと。なんと19日間かけて韓国を1周しているのだとか(!?)。小柄な感じではありますが、とても活動的で驚きました。

ソウルや釜山ならならまだしも、全州、韓国の地方都市で、日本人のひとり旅の人と出会うなんて、思いもよらずの出来事。しかも年齢までいっしょ。

韓国が好きな人も私のまわりにはそれほどいなかったため、「話ができる!」と思ったこともまた嬉しかったのです。

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バスターミナル前の通り

時刻は13時半。お互いにまだ食事をしていないということだったので、一緒に全州ピビンパを食べ、観光することになりました。

案内所の方は「料理に愛情がこもっている感じのする中央会館がいい」と、彼女に勧めたらしく「中央会館」というお店に決定!かの有名な全州ビビンパを食すためタクシーを捕まえます。

全州バスターミナル付近の観光案内所で、1人旅をしている日本人の同い年の女性と出会い、一緒に名物・全州ピビンパを食べに行くことになりました。

タクシーのなかで簡単に自己紹介をしつつ、全州の中心街へと向かうこと数分。家族会館の前でタクシーを降りました。

家族会館の看板を横目に見つつ、案内所の方がおすすめをしたという「中央会館」に入ります。

さて、全州のビビンパといえば、平壌の冷麺、開城の湯飯とならび、朝鮮時代3大料理の1つ。さらに「食の全羅道」とも呼ばれるこの地域の食べ物が、どれだけ美味しいのか、それを楽しみにしてここまでやってきたのです。

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注文すると膳の上には13種のパンチャン(おかず)が並びます。全羅道のお店ならではのもてなしは私にとってもこれが初めて。これだけの食べ物が並んでいるのを見るだけで幸せいっぱいの気分になりました。

ピビンパを待つ間、2人でここまでの旅行の話をしていると、彼女はソウルから入国し、すでに江原道、安東、釜山などを訪れ、10日間かけて韓国の地方を回っているのだとのこと。

さらにうまくやりくりし、資金を抑えるため、ゲストハウスやチムジルバンなどに泊まりながら、ここまでやってきたのだとか。ここまでする、という行動力には本当に驚きました。これは私自身の旅行の参考にもなっています。

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おかずをつまみながら、そんな話をしているうちに、注文をしたピビンパが出てきます。全州のピビンパは具材がとても豊富。20種類以上もの色とりどりの野菜などが入っているのが特徴です。

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石釜のご飯を真鍮の器に移し、店員の方が混ぜてくれました。きれいに盛られているので崩すのももったいない、と思ってしまうのですが、色彩鮮やかな野菜はご飯の一粒一粒に絡ませられるようにしてとにかく混ぜます。

そして、ご飯が入っていた石釜にはお湯が張られます。「これは一体何なのか」と思っていたのですが、店員の方にに尋ねると「食べるもの」のだとのこと。ヌルンジ(おこげ)スープには、食事のあと胃を休める効果があるのだといいます。

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全州ピビンパや副菜の豊富な食材からなる、鮮やかな色彩には視覚からも心を打たれ、そしてその味に舌鼓を打ちながら、全州の味を堪能。

さらに本当なら1人で食べにいくはずだった、この全州ビビンパを韓国”おひとりさま”旅の仲間と、韓国のお話をしながら食べた、ということに今改めて喜びを感じます。

なんと韓国の地方都市なのにもかかわらず、ひとり旅をしている同い年の女性と出会い、全州ピビンパを堪能。おなかもいっぱいになったところで、そのまま2人で観光地を巡ることになりました。

ガイドブックに載っているような全州の見どころといえば、市内の中心部に集中しているので、歩いてまわることができます。

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中央会館を出た私たち2人は地図を見ながら南の方角へ。街中なのにもかかわらず大きな門がすぐに見えてきます。

それは全州府城の4大門の2つである豊南門。四方にあった門のうち、現存しているのはこの南門です。漢字で大きく「湖南第一城」と書かれています。

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そこから東の方角に歩いていくと、全羅道の代表的な西洋近代建築の史跡である殿洞聖堂や、李成桂の肖像画が奉られている慶基殿があります。

彼女は建築に興味があり、大学でもその分野を専攻していたとのこと。建物の模様やつくりなどが気になるようで、下からのアングルなど、異なる角度から写真に収めていきます。

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私は正直なところこの分野には疎いのですが、自分とは異なる分野に関心がある人と一緒に歩くというのはそれもまたいつもとは一味違った楽しみです。

慶基殿を出て、通りを歩いていくと、多くの人でにぎわう全州韓屋村があります。ちょっと高台に上がって、この一帯を見下ろしてみると、韓屋の美しい屋根が広がっています。

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韓屋村をちょっとゆったりお散歩。小江戸・川越の蔵造りの町並みにもなんとなく似ているようなソウルの仁寺洞のようなそんな昔ながらの風景です。

工芸品や陶器などのお店、韓方文化館に立ち寄ってみたりと、一歩一歩の足どりはゆったり。なんだか時が経つのを忘れてしまいそうな、そんな「スローな休日」を過ごすのにふさわしい町並みです。

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そして私たちは韓屋村にあるカフェへ。しばし語らいながら一休みをします。そんなことをしているともう時間は午後5時近く。楽しかった「おひとりさま2人」の旅行も最終章へ。

まだまだこの全州でゆっくりとしていたいのですが、この日、私は前もってソウルの宿を予約してしまいました。だいぶ時間が遅くなってきたのにもかかわらず、全州から200キロメートル以上も離れたソウルを目指さねばなりません。これからまだ長旅が続くのかと思うとちょっと気が遠くなってしまいました。

一方、彼女は全州バスターミナル近くの宿に泊まるということで、とりあえず一緒に歩いてバスターミナルに向かいます。旅先で出会った2人で全州を街歩きしたあと、バスターミナルまで戻ります。

全州ピビンパのお店や見どころの集まる全州の中心市街までは、バスターミナルからタクシーで10分もかからなかったので、徒歩でも30分はかかるまいと思い、歩いていくことにしました。

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殿洞聖堂

麒麟路という大通りを通っていくのですが、しかし、いざ歩いてみると意外にも時間がかかり、しまいにはこの方向であっているのかと心配になってきました。

「じゃあちょっと道を聞いてみよう」ということで、道端で商売をしているおばさんに尋ねてみると、この方向であっているとのこと。けれどもさらに5分歩いても、まだバスターミナル近くの交差点にたどり着きません。

そこで横断歩道で信号待ちをしていた20代後半ほどの女性に尋ねたのです。「私も同じ方向に行くので・・・」と言われ、一緒についていくことに。

「どこの国からいらっしゃったんですか?」
「日本のどこから?」「韓国語上手ですね!」
「私が話していることすべてわかります?」

そんな簡単な会話をしながら歩いていきました。その方は介護などの社会福祉の仕事をしているとおっしゃっていましたが、日本にはまだ一度も行ったことがないということでした。

せっかくだからと名前とメールアドレスを交換し、日本に行くことになったら連絡すると言っていました。旅先で見知らぬ人と、会話ができるというのは旅の大きな楽しみ。このときはたまたま2人でしたが、1人で行くとこういう機会はとても多いのです。

さて、バスターミナル近くの交差点にたどりつき、親切にもわざわざ遠回りをしてターミナルまで送り届けてくれました。

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その女性はターミナルの売店の中に入っていき、瓶入りの暖かくて甘い豆乳を2本買って出てきました。そして私たち2人に「飲んで」と言って差し出してくれたのです。

旅先でしていただいた親切というのは心に残ります。3月の韓国はまだまだ寒いのですが、なんだか心までポカポカしてくるようなそんな気持ちでした。人の温かさに触れられる、そんな韓国旅行が大好きです。

時間はすでに6時を回り、あたりは少し薄暗くなってきました。一緒に全州をまわったひとり旅仲間ともそこで別れをつげ、それぞれ、ひとり旅の残りの行程に戻ります。

全州では”ひとり旅仲間”との出会いがあり、さらに道を教えてくださった現地の方にも親切にしてくださり、韓国旅行のなかでも心に残る、とっても濃い1日になりました。(完)



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トム・ハングル(吉村剛史)
吉村剛史(よしむら・たけし) 1986年生まれ。韓国旅行・地方旅の総合発信者。2012年に韓国文化誌『スッカラ』でデビュー、その後韓国旅行、語学Webの編集・ライターを経て、講座、トークイベントでの発信も。これまで韓国100市郡以上を踏破。平昌五輪開催の江原道公式ブログにも寄稿中。プロフィールお問い合わせ


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